ホテルのアプローチに差し掛かると、中から係が出てきて案内してくれた。ほぼ10年ぶりに来たが、円形のアトリウムはなかなか壮観だ。日差しがまぶしい外から、やわらかい光に照らされた館内に入ると、気分も体も一気にクールダウンされる。チェックインを済ませると、部屋まで見習いのベルガールとトレーナーが同行。夏休み期間を利用して、学生の研修を行っているらしい。

今回の部屋は38平米のスーペリアダブルルーム。円形の棟にある部屋の中では最も広く、6階までの各フロアに1室しかない希少なタイプだが、位置的には、細い路地を挟んでオフィスやマンションが目の前にあって、眺めは最も悪い部類だ。もっとも、このホテルには、眺めがいいと言えるような部屋はないようだが。更に、7階以上はほぼ全面が窓であるのに対し、6階以下では窓がぐっと小さくなる。

部屋は横幅が広く取られており、空間的にはゆとりがある。180センチ幅のキングサイズベッドは、真っ白なデュベカバー仕上げ。マットレスは日本ベッド製だが、最近新しくしたような印象で、寝心地はなかなか。ベッドの前にはふたつのアームチェアがあり、その他、窓を背にしたライティングデスクと、テレビと引き出しを備えたアーモアを置いている。ミニバーは、ガラスの格子扉の付いた飾り棚になっており、ハロゲンのスポットライトが照らしている。天井高は高いところで250センチあるが、天井の半分以上を占める梁の部分は210センチしかなく、小さな窓とあいまって閉塞感を生じさせている。

テレビプログラムは退屈な内容で、ディスカバリーチャンネルやムービープラスも1,500円の有料チャンネルに含まれている。ミニバーはソフトドリンクが420円と、やや高い。クローゼットは2平米程度の広さがあり、ウォークインもできて便利だった。家具はどっしりとしていて、しっかりとした造りだが、ファブリックに関しては相当なダメージが感じられるので、そろそろ一新して欲しい。

バスルームは約4平米のタイル張りユニット。照明がベイシンにしかなく、いささか暗いのが気になった。アメニティはこれといって珍しいものはなく、シャンプー類は壁掛けディスペンサーを採用している。ソープもリキッドタイプのみで、固形石鹸は置いていない。タオルはバスルーム内に2枚ずつ用意してあるが、予備のタオルがナイトウエアと共にテレビ下の引き出しにしまってある。

せっかくバスルームでＢＧＭが聞ける装置が備わっているのに、ボリュームの設定が大きすぎて、とてもではないが使えないのが残念だった。シャワーの圧力は十分だが、湯の温度が低いことや、湯ざわりがなんとなく油っぽく感じられるのが気になった。また、バスルームの奥にはかなりのデッドスペースがあり、そこも占有面積に含まれていることを考えると、この部屋の実質的な有効面積は30平米程度ではないかと思われる。

このホテルは、建築的には見所のある建物だが、館内の設備には物足りなさを感じる。ホテルショップはペイストリーブティックだけで、日用品などは取り扱っていない。フィットネスルームもないので、客室をつぶして宿泊客専用ジムを作るとか、近隣のスポーツクラブを利用できるようにするなど工夫して欲しい。

朝は、蝉の声で目覚めた。ホテル周辺は蝉のメッカという感じで、季節になれば連日の大合唱となる。朝食は「伴菜」の和朝食をチョイス。いかにも福岡らしい内容で、味もよかった。チェックアウト後は、博多駅までの送迎サービスを利用した。ホテルカーのエスティマに、4人の乗客と女性の運転手が乗り込んで、福岡駅までわずか1分程度で到着。歩くにはちょっと遠いが、タクシーに乗るのも気が引けるという距離だと、送迎のありがたみも大きい。