午後10時。ちょうどタイミングが重なったのか、小さなフロントカウンターの前には、チェックイン手続きを待つビジネスマンの行列ができていた。フロント係は慌しくしているが、すぐ隣にあるコンシェルジュデスクでは、女性の係がひとりで座って暇そうにしている。そこでは手続きが出来ないのだろうが、「私は関係ありません」と言わんばかりの態度がなんとも感じ悪かった。 順番が回ってきてカウンターに立つと、担当したのはマネージャーと思われる、他とは制服の違う中年の男性だった。他の若い係たちは、にこやかにサービスに当たっているが、この中年はにこりともしないし、散々待たせたのに「お待たせしました」すら言わない。禁煙室をリクエストすると、彼は得意げにこう言った。「万博で混んでますんで、無理ですね」。
名古屋が元気なのは大変結構なことだが、万博景気が未来永劫続くわけではあるまいし、他に言いようがないのだろうか。「では、その部屋で我慢するので、カーテンを取り外してください。」と言うと、「何とかご用意できました」と前言を翻した。ホテルというのは、本当に用意が出来ない場合は丁寧に謝ることが多いが、適当にあしらおうと思っている時ほどそっけなくする。あるものをないと言っている時は、その様子をみればわかるのだ。
この感じの悪い中年マネージャーとは対照的に、若い男性のスタッフは本当に溌剌として好感が持てた。エレベータホールで出会っても、廊下ですれ違っても、飛び切りの笑顔で挨拶してくれる。それを見るだけで、こちらも元気が出てくる。
利用した客室はアーバンシングル。このホテルで最も狭い客室だ。それでも24平米の面積があり、シングルルームとしてはゆとりがある。幅が狭い分、細長い部屋だという印象があり、入口から窓まで、片側の壁は、ただひたすら壁という感じで、途中に鏡がある以外に装飾もなく、そっけない。
デザインテイストも悪くないし、明るい色合いの中に黒の直線をあしらった都会的な雰囲気だが、照明器具に白熱色蛍光灯が多用されており、なんとなくぼんやりとした印象だ。カーペットはすでに踏みしめられてペッタンコ。居室にはベッド、ソファ、バゲージ台、デスクユニットというシンプルな設備だけだが、それぞれに存在感があり、面積的にもこれ以上は物を置けない感じ。
ベッドの幅が150センチと広いのはいいが、デュベカバーやシーツの肌触りは悪いし、マットレスの感触も今ひとつ。デスクでは無料の高速インターネット接続が使えるが、電話機はベッドサイドのみ。デスクとベッドの間に冷蔵庫とテレビが置かれているが、そのテレビが大きく場所を取っているので、液晶テレビに替えれば随分とスッキリすると思う。テレビの前に一人掛けのソファがあっても、テーブルが添えられていないのは片手落ちな気がするが、いささか窓際がごちゃごちゃしているので、テーブルがあったら、それはそれで邪魔かもしれない。
バスルームは全開可能なフレンチドアが印象的だ。コンパクトなユニット式だが、洒落た浴室金具やユニークな柄のシャワーカーテンを使うことで雰囲気を変えている。バスタブは長さが140センチと小ぶりながら、深さが60センチ程度あるので、肩まで湯に浸かることができる。シャンプー類は壁掛けディスペンサーだが、ボディスポンジ、入浴剤などのアメニティが用意されている。清掃状態は良好で、滞在中の清掃も迅速かつ丁寧だった。
滞在中、いくつかの店舗で食事をしたが、サービスも味も満足だった。特に、夜遅くに訪れたコーヒーショップでは、ラストオーダーぎりぎりで店内も閑散としていたが、気持ちよく迎えてくれた。その時提供されたサンドイッチも、丁寧に調理されており美味しかった。また、和食レストランでの昼食は、ややいい値段だなという印象だったが、運ばれてきた料理は値段の価値が十分に感じられる内容だった。しかし、どの店舗もedyの取り扱いにまだ慣れていないようだった。
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