郡山駅で新幹線にダッシュで飛び乗り、上野でイブニングライナーに乗り換え、成田駅からタクシーで15分程で成田全日空ホテルに到着した。それぞれの乗車時間はたいした長さではないが、やはり乗り継ぎが多いと疲れるものだ。ロビーは改装がなされ、シックなソファが多数並ぶ憩いの空間になった。午後9時を回っていたが、ロビーは静けさを保っており、外の雨がしっとりとした空気を館内にも運んできてた。チェックインは機能的にあっさりと済み、客室への案内もなく、重い荷物を引きずって一人客室に向かった。やっぱりエアポートホテルでは寂しい気分に包まれる。
客室は最もスタンダードなシングルルーム。面積は20平米で、ベッドは120センチ幅と狭いが、その分スペースには余裕があった。ドレッサーを兼ねたデスクは、机上面を持ち上げるとミラーになる仕組みで、コンパクトな設計。ベッドサイドの電話機にも容易に手が届くのは、シングルルームならではだ。デスクに向かうと、テレビに背を向けるようになるレイアウトだが、アームチェアに座ってもなお、テレビに背を向ける配置というのは不親切だ。もちろん自分でイスの向きを変えればいいのだが、デフォルトのセッティングの中にこそ、ホテルがゲストの利便性を考えているかどうかの感覚が見え隠れしている。
窓の外には森が広がっているが、夜は何一つ見えない暗闇だった。また窓が著しく汚れており、まるで磨りガラス越しに外を見ている気分だった。ルームサービスは20時から23時までに限って営業しているが、ビビンバセットが3,465円、カレーやスパゲッティのセットが2,888円と高い。バスルームはシングルの割りに広く感じた。横広のレイアウトで3.36平米の面積があり、ゆったりくつろげる。室内は前回利用した時同様、周囲の音がよく聞こえていた。廊下からは人が往来する音だけでなく、不思議なことに犬の甲高い鳴き声までしばしば聞こえていた。
ちょっと小腹が空いたので、まずは最上階の「彩雲」の様子を見に行ったが、創作ダイニング風で一人で過ごす雰囲気ではないと思い、1階のカフェ「セレース」へ。22時までとあったが、店の前に立ったのが21時55分。キャッシャーにいる係に「もうおしまいですね?」と尋ねると、「大丈夫ですよ、ラストオーダーが22時ですので」と感じよく招き入れてくれた。店内はすでに閑散としていたが、改装されて明るくヘルシーな雰囲気になっていた。様々などんぶりものが2,310円、ディナーブッフェは3,465円と手ごろなメニューが並ぶ中、舞茸カレーとコーヒーのセット1,963円を注文。サービスは丁寧で、味もよかった。
翌朝は6時半にチェックアウトして空港に向かった。スコールのような激しい雨が降り、視界もはっきりとしないのでフライトへの影響が心配だったが、予定通り成田を朝一番に離陸する便で北京に向かって旅立つことができた。その時はまだ、ひとり北京で恐怖の体験をするとは、想像だにしていなかった。
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