2004.01.29.(木) |
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成田全日空ホテル Deluxe Double Room ANA Hotel Narita |
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哀-3 戻らない旅へ | |
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成田空港周辺のホテルには、ターミナルからおのおののホテルが無料送迎バスを運行しているが、成田全日空ホテルまでは遠回りのルートを通るので、一番時間がかかる。小さなマイクロバスだが、意外にも利用するゲストは多い。空港から20分弱掛かっただろうか。バスが正面玄関に到着する度に、ベルアテンダントが出迎える。場所柄、トランクなど重い荷物を持ったゲストばかりだから、ベルは非常に大変だ。女性のベルも多く、一瞬いいのかな?と躊躇してしまうが、みな一様に明るく健康的で頼もしかった。
半円形をした2層吹き抜けのロビーは明るく、数多くのソファが並び、自由にくつろげるようになっている。開業15周年を機に、4月のリニューアルオープンを目指し全館に及ぶ大規模な改装工事が進んでおり、この時は宴会場やレストランが概ねクローズしていた。チェックインはスムーズで、ベル同様に明るく礼儀正しい。スピーディだが、さばかれているような印象はなかった。 客室はほぼ改装が完成している。パステル調のライトなインテリアから、一転してシックでシャープになった。今回は29平米のデラックスダブルを利用。全体的にオーソドックスなレイアウトながら、家具のディティールに工夫を凝らして個性を打ち出した。特に間接照明を埋め込んだ、光るナイトテーブルや光るテレビキャビネットが印象的。木目とガラスのコントラストもいい感じ。だが、クオリティそのものはエクセル東急クラスで、決して高くない。 窓は大きくない。遮音性も完璧とはいかず、飛行機の音や隣室の音などがもれ聞こえていた。カーテンはレースカーテンを内側にして、いつでもレースのやわらかさを室内に見せるよう工夫した。窓際にはアームチェアとコーヒーテーブル、そしてドレッサーを兼ねたデスクがあるが、デスクの椅子が不釣合いに低くて座りにくかった。電話機はデスクのみでベッドサイドにはない。LANは24時間ごとに735円。 照明は蛍光灯のシーリングとデスクスタンドが主だが、すべてを点灯してもやや暗い印象なのは、ファブリックの色合いによるものだろう。照明スイッチは概ね独立している。ベッドはキングサイズ。デュベカバーはその都度替えるものではなく、その下に一枚シーツを挟んだスタイルのもので、いわゆるカバー一体型だ。ダークウッドをメインに使っているが、ヘッドボードだけはライトな色の木を採用。両脇からチューブの読書灯が出ているが、片側はすでに部品が欠損して不調だった。 バスルームには手を加えていないようだ。昔の全日空ホテルらしいスタイルが残っている。ベイシン部分とバストイレの間に仕切りがあり、全体をタイルで仕上げている。タオルは3サイズ2枚ずつで、バスローブはない。シャンプー類は壁掛けディスペンサーだった。清掃にはもう少し注意が必要だ。約4平米ある割りには、それほどの広さには感じなかった。屋内プールは無料で利用できるが、ジム、サウナ、テニスコートはそれぞれ2,000円が掛かる。 この時営業中のレストランは「セレース」1店舗だけだった。明るいが時代遅れな内装が、エアポートホテルらしくて旅情をそそる。ブッフェがあり調理人も立っていたが、それほどたくさん食べる気にならずアラカルトでチキンのセットを注文した。手頃な値段だったが、盛り付けも丁寧で、美味しかった。サービスも行き届いていた。 それにしても、どうしてエアポートホテルというのは、こうも切ない気持ちを呼び覚ますのだろう。ただちょっと海外に行って、すぐまた帰って来るのに。でも、旅からは戻ってこれても、もう今日に自分に戻ることは決してないし。その度に人生を振り返ったりして、もしかしたらこれっきりこの国には戻らないかもしれない、なんて考える。事実、どこかの国で劇的な何かに出会ったら、そこで瞬時にすべてを投げ出して違う生き方に飛び込んでしまうかもしれない。そんなどうにでもなれる冒険心が、自分のどこかに潜んでいる。それが目覚めるのが、決まってエアポートホテルで過ごすひとりきりの夜。 ホテルに不足はないが、哀愁を感じての、哀。 |
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[成田全日空ホテル] |
Y.K.