9月1日に開業1周年を迎え、アトリウムロビーでは3日間に渡り、3組のミュージシャンによるハイセンスなライブを開催していた。いつもは静けさの漂うロビーだが、この時は多くの人で賑わい、無料でサービスされるシャンパンを片手に盛り上がっていた。ジャズをベースにしたシックな音楽が、アトリウムの雰囲気とよくマッチしていた。
チェックインはスムーズだったが、サービスはクールになりすぎだった。係は、人間らしさをあえて排除し、無機質に振舞うことをクールだと思っているかのようだったが、感じたのは単なる冷たさだった。このロビーを赤外線センサーで見たら、フロント周辺だけ青色で表示されるんじゃないか、などと想像しつつルームキーを受け取った。
19平米のシングルルームは、建物のコーナーを活用した、ユニークな形状の部屋だ。扉を入ると奥に向かってスペースが広がるのが一般的だが、ここは左右に分かれた構造をしている。一方にはバスルームとベッド、もう一方に細長い窓とデスクがあり、ちょうど中央あたりにコーヒーテーブルを添えたアームチェアとテレビ台が置かれている。ミニバーとクローゼットは扉の脇に設置した。
高層ホテルなのに窓が細くて小さいのは残念だが、室内の雰囲気は悪くないので不思議と居心地はよかった。ベッドは140センチ幅で快適な寝具を使っており、デスクは小さいが余計なものが載っていないし、LANもあって使いやすい。テレビは小さいが、アームチェアに座るとかぶりつきで見られるし、家具のクオリティは少なくともセルリアンタワーよりも高級だ。
バスルームはコンパクトだが、他の客室同様に明るく、アメニティも十分に揃う。ただ、シャワーカーテンがヴィラフォンテーヌと同じペラペラのもので残念。排水の悪さも気になった。全体に、一人泊まりのスペースとしては、機能的で必要十分という好印象だが、料金はまだ強気のまま。もう一声安くなればぐんと利用価値は高まる。
朝食はかなりグレードアップしていた。チキンやペンネなどを含めたホットミールが充実し、色とりどりのフルーツや、ヨーグルトに添えられる美味しいソースなど、パリの朝を思い出す。素晴らしいパンも健在だ。客席はフル稼働の賑わいだが、都会的な雰囲気は保たれていた。フロント脇のショップでは、館内のアートを手がけるモニック・ル・ウェラーの作品も取り扱っているが、相変わらず目立たない存在の店だった。
チェックアウトも、スムーズではあったが、なんとなくスッキリとしない中途半端なサービスだった。やはり冷たい印象で、丁寧さに欠けている。十年ほど前の、とんがったサービススタイルで、それにむしろ懐かしさを感じるほど。新しいホテルなのに、サービスは十年遅れている。
また、チェックインでもチェックアウトでも、フロントカウンターの半透明のガラス天板に、ねっとりと手垢がこびりついているのが気になった。毎日毎日、一年間もフロントでサービスをしていて、係が誰も気づかないというのが不思議でならない。よく注意をして、ゲストが途切れた時を見計らい、こまめに拭いたらどうだろう。
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