ホテルに着いたのは16時。館内は閑散としており、貸切のような静けさだった。スタッフもののんびりとした雰囲気で、さぞや時間の流れが遅く感じることだろう。これではやる気を保つだけでも容易なことではない。しかし、人影まばらなロビーは、都心を忘れさせてくれる落ち着いた空気が満ちており、おもわず深呼吸をしたくなるようだった。面白い形のスピーカーからスムースジャズが流れ、時折ひびくカップやカトラリーのぶつかる音がライブ感を添えている。
チェックインのためにカウンターへ向かうと、係はひとりしかおらず、あいにく電話中だった。電話が終わると同時に別の係が奥から表れ、結局ふたり揃って手続きに付き合ってくれた。荷物は少なかったので自ら客室へ。
客室は22平米のスタンダードルーム。かなりの狭さを覚悟していたが、思ったほど窮屈でもなかった。真正面に東京タワーの全景を望む大き目の窓には、ビビッドな赤いカーテンが掛かる。レイアウトは基本的にオーソドックスだが、ミニバーや冷蔵庫は窓際に配置した。窓際にアームチェア1脚とちいさなコーヒーテーブルがあり、デスクには液晶テレビが載る。
ベッドは110センチ幅と狭いながら、快適な寝具を使っており、寝心地は素晴らしい。照明は個々にコントロールできて便利だが、ナイトランプは中央にあるだけで、左右別にコントロールすることのできないものだ。読書灯もないので夜の照明の微調整には苦労する。また、ビルの下の鉄道から聞こえる騒音が気になって、夜は寝付くまで時間がかかった。
エキスプレスサービスのあるランドリー、本格的な料理も楽しめるルームサービスなど、充実した面も見せるが、この狭い部屋で「タテルヨシノ」の料理を味わう気分にはなれない。だが、目の離せない子供がいるゲストなどは、居ながらにして名店の味を堪能できて便利だろう。LANは全室無料で、テレビプログラムはディスカバリーチャンネルなど充実しているが、BGMはラジオだけで音楽がないのが残念。上質な空間には心地よい音楽は必須なのに。
入口脇にはクローゼットがあり、扉が姿見を兼ねている。バスルームはシンプルなユニットバスだ。照明が非常に明るいので清潔感が増幅される。充実したアメニティと勢いのある水圧が心地よさを演出するが、やや味気ない気もする上に狭い。タオルは2種類でバスローブはなかった。また、タオル掛けがベイシンのすぐ脇にあり、タオルを掛けるとベイシンにつっかかってしまい使いにくかった。
全体にデザインホテルとしての深い思いがあるようでいて、どうしちゃったの?と思うようなダサい品々が散見される。例えばビジネスホテルでしか見られないような靴べら、デザインという言葉とは無縁そうな時計や氷入れなど。吟味の成果はディティールにこそ見せてほしいもの。
フロント脇にはホテルショップがあるが、店が小さいし、店員が常駐していないので見逃してしまいそう。部屋そのものは、なかなか快適だったが、実際に支払った料金ほどの満足はない。これなら次は迷わず帝国ホテルかインターコンチネンタルに行く。身の程をわきまえるべきだ。
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