羽田第2旅客ターミナルがオープンすると同時に、羽田エクセルホテル東急が開業するが、それに先駆けて羽田東急ホテルが9月30日で閉館し、40年の歴史に幕を閉じる。羽田空港に隣接する唯一のエアポートホテルとして、羽田空港の歴史を見守ってきたこのホテルは、いつのまにか東京で最も古いままのホテルのひとつになっていた。クラシックホテルとも違う、単に古臭いだけのホテルはもうほとんどない。40年の間に、隣のプリンスホテルを別館として吸収したり、ガーデンを設けたりと、空港の拡大とともにホテルも成長してきた。そして迎えた最後の夏。お名残り惜しい滞在となった。
予約したのはシャワー付きシングルルーム。別館の客室になったことがないので、一度利用してみたかった。チェックインを済ませ、長い渡り廊下を経由し、まるでアメリカのモーテルのような内装の階段を上がり、まだあちこちの客室で清掃が行われている細い廊下を縫うようにして、狭いシングルルームにたどり着いた。東京都内にいるのに、南半球の地の果てまでやってきたような気分だった。
室内は昼なお暗く、すえたような長年の臭いが蓄積していた。部屋の幅は230センチしかなく、奥行きが深く感じられる。天井高も235センチと低い。120センチ幅ベッドが窓の方を向いて置かれ、枕元には都心のホテルでは珍しい蚊取りマットが用意されている。空調設備は窓際にあり、開閉可能な窓はすでに結露で曇っていた。窓とベッドの間には、小さなテレビ、ライティングデスク、小さなコーヒーテーブルと、ファブリックが擦り切れたアームチェアがあり、天井からのペンダントライトがレトロな雰囲気を出している。
バスルームはタイル張りで、バスタブのないタイプだ。白いタイルに蛍光灯の明かりという空間は、病院のような陰気さがある。シャワースペースは73×80センチと狭く、場合によっては肘が壁に当たって痛い。廊下では中国人の団体客が大声で話しており、とてつもなく遠くに来たような錯覚は深まるばかりだった。
ロビーでは開業当時からの歴史を振り返る写真展を行っていた。当時は本当にターミナルビルの目の前に位置していたことがわかるが、現在のエントランス前の風景は荒野のようだ。また、現在のコーヒーショップ「バルーン」の前は、「はっぴ」という店名だったらしい。2日間、晴天に恵まれたのでプールに出かけた。皆、それぞれに最後の夏を満喫しに来たのだろう、いつにない賑わいだった。
|