佐野での公演を午後9時半に終え、翌日7時の飛行機に乗って広島に向かうスケジュールだったので、体力を無駄に消耗しないためにも、羽田東急ホテルを予約した。深夜に到着して、早朝の出発となるので、眠れればそれでよいとも思ったが、前日には快適とは言いがたい滞在を経験し、舞台の疲れもあったので、体を少しでも休ませておきたかった。このホテルに顔がきく友人がいるので、今回ばかりは奥の手を使い、彼に頼んで少し優遇してもらえるよう取り計らってもらった。友人からは、しっかり頼んでおいたし、アップグレードすると返事をもらったから、ぜひゆっくり休んでほしいと、返事と激励があったので、友人とはありがたいものだと、すっかりその気になって到着した。 23時。ロビーにはまだまだ活気があった。ベルマンが溌剌と出迎え、好印象だった。しかし、フロントはいささか暗い雰囲気で、ただ黙々と仕事をこなしているようでもあった。案内された客室は、もっともスタンダードなタイプの客室だった。予約したタイプの客室だから、ホテルの落ち度とは言えないが、アップグレードすると喜ばせておいてそれはない。フロントに尋ねると、これがアップグレードした客室だという。これよりも低いグレードの客室があるのかと尋ねると、別館の客室がそうだと答えた。しかし、それは予約したタイプよりも低いカテゴリーなので、やはり、この客室でアップグレードをしたと言われても、合点がいかなかった。
夜も遅いし、我慢してしまおうかとも思ったが、それでは間を取り次いでくれた友人の顔が立たない。よくよく尋ねてみると、同じタイプの客室の中でも、正面向きの条件のよい部屋を用意したことでもって、アップグレードだと説明された。実際に眺めがよければ、それはちょっとした配慮かもしれないが、まったくといっていいほどありがたみのない眺めだった。それに、飛行機の席を通路側から窓際に「アップグレード」したとは言わないのと同様に、これではアップグレードにはならない。
結果的にはアサインが間違っていたとかで、コーナーデラックスルームが用意された。初めから手違いなく、この客室が用意されて入れば、随分と印象もよく、その効果は大きかっただろうが、こうもガタガタでは残念ながらありがたみも半減だ。終演後、食事もせずに羽田に向かったので、かなりの空腹だった。すでに1階のレストランは閉店しており、営業しているのは最上階のバーだけだった。周辺にレストランや店舗もなく、遅い時間でもホテルがこれだけ賑わっているならば、もう少し遅い時間までレストランを営業してもらいたいところ。バーでは通常500円のチャージが掛かるが、食事だけの利用だったからか、チャージは加算されなかった。
利用した客室は、スモーキングフロアだったので、廊下はとてもタバコ臭かったが、客室内は気にならなかった。スタンダードルーム2部屋分の面積があり、コーナールームだけあって、2面の窓を持っている。部屋の中央に仕切りがあり、リビングスペースとベッドスペースに分かれた、ジュニアスイート風の造りをしている。リビングスペースには、窓に向かったライティングデスク、テレビ、2人掛けのソファとテーブルがある程度で、すっきりとしたレイアウトだ。ソファに対してアームチェアなどは置いていない。困ったことに、ソファのクッションの下は、ティシューや綿棒などでひどく汚れて不衛生だった。ベッドは120センチ幅のものが2台並び、ベッドスペースにももう1台テレビがある。引き出しやバゲージ台もベッドスペースの方に置いた。
バスルームはタイル張りで、ベイシントップにだけ大理石を使った。トイレに洗浄機能つき便座はなく、バスタブも浅く古いタイプのままだ。バスタブに湯を張った状態で栓を抜くと、排水口から逆流して、かなりの洪水になってしまう。アメニティは一通り揃い、男性化粧品が充実するなど、オヤジ系の品揃えだ。バスローブも備えている。オヤジ系かと思いきや、バスルームとは完全に独立し、カーテンで仕切られたドレッサーもあった。全体的に、夜は暗い客室だと感じたが、朝日が昇ると急に明るくなった。日中は陽が差し込み、相当に暑くなるかもしれない。なお、電話はなんとパルス式。2004年の暮れには羽田空港にエクセルホテル東急がオープンする予定だが、もうこちらには投資をする気はないのかもしれない。この微妙なテイストを味わうのは今がチャンス。
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