第一ホテルからホテルオークラへ。運営が変わってから初めての滞在だったが、この時点では実態に大きな変化は見られなかった。第一ホテルを名乗っている時から、人事も運営も独自性を確立しており、それは現在も概ね引き継がれている。オークラになって、早くもチェーンの中での稼ぎ頭として一目置かれているらしい。
この日は羽田空港から直通のリムジンバスでアクセスした。空港から首都高速に乗り、あっという間にディズニーリゾートに到着。いくつかのホテルを経由するので、高速を降りてからの方が時間を要したが、最初から閑散としていたバス車内は、オークラ東京ベイに着いた時には完全に貸し切りになっていた。
チェックインはスムーズだった。第一ホテルの時代からの会員組織「ドルフィンクラブ」は存続しているが、サービス内容に変更があったかは把握していなかった。フロントで尋ねるといくつかの特典を説明されたが、以前あったウェルカムドリンクサービスについては触れなかったので、なくなったものだと思った。しかし、後で印刷物をチェックしたらウェルカムドリンクも健在と判明。もらい損ねてちょっと悔しい気分。
日中はディズニーリゾートに繰り出している人が多いのだろう。ホテル内はひっそりと落ち着いていた。凝った造りのロビーや回廊は、どの時間帯にも魅力的な表情を持っている。ロビーが一番賑わうのは、パークの閉園後だ。みやげ物を抱えたカジュアルなスタイルのゲストが多数あふれるが、零時近くにはふたたび静けさが訪れる。やはりここは回廊にわずかに響く自分の靴音が感じられるくらいの静けさがよく似合うホテルだ。
今回利用した客室は7階のデラックスルーム。向きはNKホール側だったが、先端部分に近く、窓からは海がよく見えた。このホテルの中では窓は小さいほうだが、開閉が可能。ところが、風当たりがよいせいか、夜には風がヒューヒューと音を立てていた。
インテリアはリージェントの雰囲気が色濃く感じられるもの。淡い色調でまとめた室内には、黒いものがひとつも目に入らない。壁のコーナー部分はすべて丸みを持たせて仕上げ、どこまでもやわらかさを追求した。窓を背にしたソファ、オットマンつきのソファ、どっしりとしたアームチェアと、3種類の椅子がある。どれも大型で存在感を持っているが、見事に調和している。この客室にはライティングデスクがないが、客室係にリクエストしたら運んできてくれた。
ベッドはハリウッドツインスタイルで、ヘッドボードが棚状になっているのでナイトテーブルはない。カーペットとベッドスプレッドは新調されたようだが、ベッドスプレッドの色はこのインテリアと調和しない。デザイナーの意向をもっと尊重するべきだ。
場所がら必要はないのだろうが、ネット環境やビジネスサポートは進歩どころか退化しているようでもある。電話機は枕元のみにしかなく、コンセントも少ないし照明スイッチと連動してしまっている。テレビプログラムも面白くない。また、室内にある引き出しという引き出しには、すでに何かが収まっており、自分の荷物を解く場所がなくて困った。
バスルームは相変わらず素晴らしい。見事な大理石に囲まれた10平米の天国は、長時間過ごすのに最適だ。しばらくは改装の必要などないが、洗浄機能つき便座はあった方がいいかも。アメニティは充実しており、持ち帰り用にポーチまで用意される。
滞在は大変快適だったが、それはチェックアウト時にかき消されてしまった。レイトチェックアウトをしたので、カウンターが混雑していたということもなく、すんなり手続きが始まり、明細書を提示される前に金額を言われ、なんとなく高いと思いつつも、その金額を支払った。今回はオークラのギフトチェックを使い、足りない分を現金で補填した。おつりをもらうが、それでも明細を出してくれない。チェックをしたいので明細を求めると、ソファに座って待つようにと言わた。
その後、その係は一度裏に引っ込んだ後、後からやってきたゲストの会計をやり始め、こちらはずっと放置されることに。10分くらい経ってから、係がソファまでやってきてこう言った。「順番にやっておりますので、お待ちください。」
きっとこのホテルでは、順番にという言葉を乱発しなければならない状況が多々あるのだろう。それが習慣となって、ふと口をついて出てしまったのかもしれない。しかし、この場合明らかに不適切だった。他に待っている人などいないばかりか、後から来たゲストがどんどん先に手続きを済ませてゆくのに、順番もなにもない。順序というならこちらが先頭だ。
その係は、すべてを一人で抱えていることが、そもそもの間違いだ。明細が出せなくなるトラブルがあって、それを求められているのだから、後のゲストのことは他の誰かにフォローを要請すればいい。現に、手持ち無沙汰の係がすぐ側にいたのだ。後に判ったが、彼はマネージャーだった。
「順番」云々と言い始めた時に、応援を頼んだらどうなんだと苦情を言うと、その後は、側にいたマネージャーに引き継がれた。やっと明細が発行されたが、こともあろうに彼はその明細を、別のソファでくつろぐ他のゲストの所に持って行き、説明を始めた。当然そのゲストは何のことだかチンプンカンプン。クエスチョンマークのまま、とりあえず話を聞いている。
「それ、こっちのじゃない?」と声を掛けると、やっと人違いに気付き、慌てて近寄ってきた。会計明細はプライベートなものだ。名前や部屋番号、利用内容のほか、メンバーになってるホテルだと住所などが印字されていることもある。それを他人に見られるのは抵抗があるのが当然だが、その係にはそうした感覚が欠けていた。そして彼は基本的なミスを犯している。状況がどうであれ、誰と認識できないときは、「〜様でしょうか?」と名前で呼びかけるべきだ。そうすれば人違いをされている人も「違いますよ」といえるだろう。
結局、明細には課金の手違いが見つかり、一部を返金してもらうことに。客室からダイヤルアップでプロバイダを利用したのだが、これが全国どこからでも共通の電話番号にかけると市内通話料金でアクセスできるというアクセスポイントだった。ところが市内通話料金のはずが、やけに高すぎる金額が請求されているのでおかしいと思い説明を求めると、すぐにはわからないという。時間をかけてよく調べるように言い、パークを回った後再びフロントに寄ると、今度は、当ホテルではIP電話は利用できないので・・・などと、頓珍漢なことをいいはじめる。技術的なことだから即答できないのは致し方ないにしても、何時間も調べた挙句にこれでは情けない。もう一度よく状況を説明して、再度調べなおさせたところ、0570ではじまるこの電話番号を、ホテルの交換機が名古屋近辺への長距離通話と誤認識してしまっていたということがやっとわかった。随分と時間と気分が無駄になった。
それにしても、プロバイダは従来のアクセスポイントを廃止して全国ワンナンバーに統一しようとしているが、これは拙速に過ぎる。いまどきダイヤルアップが利用されるのは、ホテルなど旅先からが主だろうが、ホテルの交換機が勝手に市外通話料金を課金してしまうのでは、このサービスの意味がまったくない。最近ではプロバイダのホームページにも、「宿泊施設などで独自の課金機能が設定されている場合、サービスが認識されず、市内料金とならないケースがあるようです。ご利用の施設へご確認ください。」といった注意書きがあるが、施設に確認しても頓珍漢な答えしか帰ってこないのだからどうしようもない。
|