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2003年1月1日

ポートピアホテル Junior Suite
喜-3 笑顔が福を招く
メインロビーの照明
神戸の定宿はほぼオークラに決めていたが、今回はあえてご無沙汰のホテルに泊まってみた。本館にエグゼクティブフロア「オーバルクラブ」を完成させ、コンサートができる国際会議場ポートピアホールを設けるなど、ますます充実したホテルになった。また、最近になってパブリックスペースや宴会場のインテリアがリフレッシュし、ここのところ空気が重かった神戸のホテルの中で、ひときわ光っている。それには、神戸の街全体のイメージをアップする力があるほどだ。

ホテルまでのアクセスは、タクシーを使わずに、ポートライナーに乗った。ビルの谷間をのんびりと縫うように進み、真っ赤な神戸大橋を渡ってポートアイランドに入る小さな車両は、神戸の景観の一部としてすっかり定着した。開通した時から、車内放送は日本語と英語の両方でされていたが、当時はそれがまだ珍しかった。市民広場駅から連絡橋を渡って、ホテル2階のショッピングアーケード口から館内に入ると、懐かしいにおいがした。ポートピアホテル独特のにおいだ。絨毯はすっかりモダンになり、ところどころ内装が変わっているが、ポートピアホテルらしい空気が流れていた。

エスカレータでフロントのある1階へ下りると、ディレクタースーツに身を包んだグリーターが案内をしてくれる。このホテルではベルアテンダントとは別に、館内の案内を専門に受け持つグリーターという係が待機している。さすがに元旦ということもあり、広いパブリックスペースはどこも混雑しており、チェックインにも少し時間がかかった。

改装されたロビーは、楕円形のスケール感のあるフロアに、多数のソファやチェアが置かれ、だれでも自由にくつろぐことができる憩いのスペースだ。周囲には心和む水の流れを配置し、見上げれば大車輪のようなシャンデリアに圧倒される。最近はこのようなダイナミックなロビーが少なくなってしまったが、子供の頃は、こうした広いロビーを見る度に興奮したものだ。

ロビーのスケールに対して、フロントはこぢんまりとしている。チェックインラッシュに備え、カウンターの中には十分な数の係が立っていた。対応はフレンドリーで、自然体だった。グリーターに客室まで案内をしてもらったが、明るく親しみのある雰囲気で、いろいろと話しかけてくれる。案内された客室がタバコ臭かったので困っていると、直ぐに他の部屋を探すなど、積極的行動を取り、要望には真心で応えてくれているようだった。正月でこの上なく忙しいはずなのに、おざなりなサービスで片付けなかったのは、素晴らしい心がけだ。建物全体にもサービスからも活気が感じられ、ポートピアホテルが生き生きと次のステップを歩み始めていることが実感できた。

地階の宴会場では、ホテルの正月ならではのイベントが多数行われていた。学園祭にも通ずる雰囲気で、幅広い年齢層のゲストで賑わっていた。大宴会場では、縁日の屋台のようなブースがたくさん設けられ、軽食やスナックが楽しめる。舞台ではビンゴ大会が開かれ、協賛各社からさまざまな商品が提供されていたが、残念ながらハズレだった。

滞在した客室は、南館のジュニアスイートだ。オーバルクラブに泊まってみたかったが、あいにく満室だった。南館のフロアも一部改装が済んでいる。11階はヒーリングフロア、14階はデラックスフロアとして、新しいインテリアの客室がある。今回は、昔ながらのフロアの先端にある客室を利用した。長い廊下の突き当たりに扉がある。部屋に入ると、半円のカタチをしたリビングルームになっており、ほぼ180度の広い窓に圧倒される。

太い2本の柱が邪魔だが、ポートピアランドや、神戸空港の工事現場、遠くには淡路島などが一望でき、時間帯を問わずワイドな景観が楽しませてくれる。4人用のソファセット、2人用のダイニングセットのほか、旧式ながら充実したオーディオ設備を備えている。大きな窓はインパクトがあり、この部屋の命でもある。しかし、昨晩は子供連れが滞在していたのか、窓には唾液まみれの小さな手跡でびっちりと埋め尽くされており、清掃の不足を感じさせた。

扉の奥には、ベッドルームがある。仕切りの上部にわずかな空間があるものの、リビングとベッドルームは完全に仕切られるので、ちゃんとしたスイートだと言ってもいい。ベッドルームには、120センチ幅のベッドが2台ならび、リビングとの仕切り壁に面して、ライティングデスクやテレビなどが配置されている。ベッドルームの採光は、デスク脇のわずかな窓だけなので、やや閉塞感があるのは否めない。この客室には高速インターネット回線はないのだが、内線にインターネットアクセス用の番号を持ち、ダイヤルアップで低速ながら、無料で利用できるサービスを行っている。

バスルームはアウトベイシンを持つが、内部はオーソドックスなユニットバスだ。バスルーム内にもベイシンを持ち、花柄のタイルが南欧のイメージを運んでくれる。バスタブにはサーモスタット付きのカランを設け、水圧も十分だった。また、アメニティは非常に豊富に用意され、その数々を見ているだけでも楽しい。バスローブやナイトウエアが備わり、充実している印象だった。この客室には、南館の特徴のひとつでもあるバルコニーは設けられていない。

客室に案内してくれた係は、その後も館内で出会う度に、にこやかに接してくれ、「おくつろぎいただいておりますでしょうか?」などと声を掛けてきた。その親切心にほだされ、夕食には予定外にアランシャペルでご散財。彼女のサービスは、売り上げアップに直結した。笑顔は確かに福を呼ぶ。

ゆったりとくつろげるリビング 夕暮れの景観

タイルが印象的なバスルーム 豊富なアメニティ

かなりのゲストで賑わう宴会場 椅子が多いメインロビー

2003年1月1日 夜
ポートピアホテル フレンチレストラン「アランシャペル」
哀-4 アランシャペルがファミレスになった夜
「アランシャペル」エントランス
現代フランス料理の最高峰と謳われた「アランシャペル」は、その洗練を極めた料理と優雅なサービスに魅了され、全国からグルメが駆けつける名店だった。今や状況が違っていることは承知しているが、当時を知る者にとっては、なんとも忍びないものがあるディナーだった。

高級店を利用するつもりなく旅に出たため、相応しい服装を用意していなかった。店に電話を入れてジャケットの貸し出しがあるかと尋ねてみると、現在はドレスコードを設けていないという返事だった。好都合ではあったが、それはそれで不安に思った。更に、電話口で応対し、そのまま予約を受けた担当者は、礼儀正しさに欠け、まるでナイトクラブの店員のようだった。

結局、持ち合わせていたややカジュアルなジャケットを着込み、予約の時間に「アランシャペル」のエントランスに立った。これまで、何度となく利用した時には、必ずメートルドテルに出迎えられて来たが、この夜は誰も見当たらず、キャッシャーの係にその場で待つよう言われてガッカリした。

ようやく案内された席は、窓側の広いテーブルだった。以前はシャンデリアのやわらかい光と、卓上のキャンドルだけに照らされた、仄かで温かい空間だったが、暗いと不評だったとかで、天井にダウンライトを多数設けてしまったため、家具や調度品はそのままでも、雰囲気が変わってしまった。その調度品や木目は、かつて眩いほどに磨き上げられていたが、銀器も含め艶がなくなり、手入れを怠っていることが見て取れる。

食前酒を勧めるタイミング、メニューを差し出すタイミング、注文を取るタイミング、すべてがダメだった。まるで素人のサービス。周囲の席には、元旦とあってか子供連れが多く、フレンチになど興味のない子どもたちは、明らかに痺れを切らして落ち着かず、早く帰りたそうだった。その親たちも、おそらく正月プランのディナークーポンで利用しているのだろう、できれば中華か和食がよかったなと顔に書いてる。他の店はファミリーに人気が高く、予約が取れなかったのかもしれない。それはそれで気の毒だ。

メニューはコースとアラカルトがあり、コースは7,500円から18,000円まで5種類が用意されている。かつてのコースは、もっと魅力のある料理が並んでいたが、比較的オーソドックスなラインナップになり、面白みに欠けていた。アラカルトも品数はぐっと少なくなったが、アランシャペル氏のスペシャリティなどがあって魅力的だ。結局、アラカルトで前菜と主菜を注文し、ワインはレオヴィルラスカーズの85年を頼んだ。サービスには終始緊張感がなく、サービスのシステムもガタガタだった。食事中にワイングラスが空になることも一度ではなかった。

確かに混雑を呈しており、余裕がなかったことは理解できる。しかし、それとは別の次元で、問題があることも明白だ。これでは、料理も期待できないと思いきや、素晴らしい出来栄えだった。この力強い料理を、いい加減な気持ちで運ぶのはやめて欲しい。過去にとらわれる必要はないが、今できることのベストは追求するべきだ。

店内の雰囲気 食後のひととき

シャンデリア 卓上の花とキャンドル

2003年1月2日 朝
ポートピアホテル 和食「やわらぎ」
哀-2 比較
南館4階の非常に広いスペースを持った日本料理の店。正月期間には3,000円でおせちを出している。おとそ、白味噌の雑煮、二段重とで構成され、見た目にも鮮やかによくできているが、前日の「吉兆」のおせちとは比較にならなかった。「吉兆」のものは、野菜のカタチひとつとっても、非常につぶが揃っており、美しい。比べては申し訳ないのだが、その印象が強かったために、まるで駅弁のように見えてしまった。

この店とは直接関係ないが、ポートピアホテルには、いくつかテナントの飲食店が入っている。そのひとつ、蕎麦の「水野」を利用した。蕎麦はうまいが、サービスがホテル内には相応しくなかった。責任者の態度には終始驚かされ、店内の清潔感も気になった。蕎麦と穴子の蒸篭ご膳1,800円。天ぷらをつけると2,500円だ。

[ポートピアホテル] 920311 920515 930330

Y.K.