エレクトーンのデザイン性

皆さんはエレクトーンのデザインに関して、どのような印象をお持ちですか?

エレクトーンは1959年の1号機種発表以来、モデルチェンジの度にデザインも進化してきました。

現在発売中のエレクトーンは、D-deckを含めて5機種。
うち3機種の基本的外観は、私がコンサートで使用しているものと共通しています。

以前は、家庭用モデルとステージ用モデルとで、デザインが大きく異なっていましたが、現在はこうした区分けがありません。

現行モデルのSTAGEAは、かつてない可搬性が特長となっており、この可搬性を実現するために、今のデザインになったと聞いています。

最初にSTAGEAを見た時は、ある意味、シンプルでモダンに感じましたが、格式のあるクラシックのステージに相応しいかといえば、残念ながら私のみならず、多くの人が違和感を覚えることでしょう。

大理石や天然木をふんだんに使った壮麗な空間では、STAGEAのモダンデザインは、安普請にさえ見えているかもしれません。

あるコンサートでは、隣にフルコンサートグランドがあり、バイオリニストはストラディバリウスを持ち、歌い手はその肉体そのものが楽器であるという環境におかれ、私はまるで軽自動車でF-1に乗り込んだような場違い感に襲われました。

楽器というのは、一般的に、機能性はもちろんのことですが、とても美しく洗練されたデザインが施されているものです。

ピアノもチェロもトランペットも、一目でそれと判るボディを持ち、ならだかな曲線が官能的なまでの美しさを湛えています。

なのに、私のエレクトーンは、ほとんどが直線で切り取られており、素材も極めて人工的です。

また、外観だけでなく、演奏者が触れる細部のデザインも、演奏家のイマジネーションに少なからず影響を及ぼすことでしょう。

たとえば、楽器に向かって、ある曲を突き詰めていく時。
美しい天然木が放つ艶にうっとりしたり、わが身と一体に融け合うかのような自然素材のパーツの手触りにも触発されることがままありますが、エレクトーンにはそれが皆無です。

高級車の内装がゴージャスで洗練されているように、楽器もそうあるべきです。

もしフェラーリやポルシェをデザインしている人に、エレクトーンのデザインも依頼したら、どんな楽器になるのでしょう。
見当もつきませんが、想像するだけでワクワクします。

デザインとは直接関係ないかもしれませんが、かつてこんなエピソードがありました。

私が加わっているアンサンブルのコンサートを、音楽関係ではない一般の友人が見に来た時の話。

その時、舞台上のエレクトーンは、演奏中に私の顔が客席を向くようにしてセットされていました。

エレクトーンのボディがスリムになったので、こうした向きにセットして行われるコンサートが、STAGEAになってからにわかに増加しました。

表情は客席からもよく見えるのですが、鍵盤はほとんど見えず、演奏している手や指も見えません。

私はアンサンブルの中で、かなり派手に演奏していたにもかかわらず、友人曰く、客席ではこんな会話が繰り広げられていたと後で教えられました。

「あの四角い箱の人は何をしているのかしら?」
「ああ、あれはDJよ。伴奏のCDを流す操作をしているのよ。」

一生懸命、リアルタイムで弾いているのに、CDオペレーターだと思われていたとはショックです。

以来、私は必ず鍵盤が見えるように楽器をセットしています。
(それでもなお、どこまで弾いてるの?と疑われていますが・・・)

エレクトーンは多彩な表現が可能なだけに、「見せ方」がとても難しい楽器です。
デザインにもまだまだ改善の余地があります。

これは現在のSTAGEAプロフェッショナルモデル。

(軽井沢大賀ホールにて)

これは一世代前のELX-1m。

(新潟りゅーとぴあにて)
まだこのモデルまでは重厚感があり、パネルも天然木で作られていました。

これは伝説のモデル、GX-1。

(エレクトーンシティ渋谷にて)
パネルと鍵盤部分だけですが、今見ても素晴らしいデザインですし、今のSTAGEAよりもむしろ「未来」を感じます。

皆さんの「エレクトーンがこんなデザインだったら・・・」というご意見をうかがってみたいものです。