失敗を恐れずに、何事にも果敢に挑戦する。
言うは易しですが、現実にそうあるのはたやすいことではありません。
これをしたら後悔するかもしれない、あれをしたら誰かに迷惑を掛けるかもしれないと、考えているうちに臆病になって、手が出せなくなる。
だれもがそんな経験をしたことがあるでしょう。
もちろん無鉄砲で、なりふり構わない行動を勧めているわけではありません。
ものごとは十分に吟味して取り掛かるのが望ましいでしょう。
でも、チャンスはいつでも気まぐれで、突然あらわれては急に消え去ります。ちょっと躊躇していたら、いざ決心がついた時には機を逃していた。そんな経験も皆さんお持ちではないでしょうか。
かつての私は極めつけの慎重派で、十分な裏付けがなければ、物事には取り掛かりませんでした。
なので、宝くじは買いませんし、懸賞にも応募したことがありません。
欲しい商品があれば、お金をためて買いに行けばいいと考えていたからです。
旅行に行くにしても、旅程をしっかりと吟味し、どこで食事をするか、どこにどれだけ滞在するかも、きちんと計画してから出かけました。
ところが、ある日突然、無計画な旅が始まりました。
今、思い出してもその理由はわかりません。急にスイッチが変わったというか、自分では感知できない領域で、何かが弾けたのです。
それまでのすべてを投げ出して、気の赴くまま約半年間、あてもなく地球をさまよい、そこで体感したものは、私の人生をまったくもってひっくり返してしまいました。
それでも、DNAはもっと強烈に私を制御し続けており、私の人生はこの旅で変わったのではなく、血に刻まれた元来の私が目覚めたのだととらえています。
まさに命がけで生きる人たちをこの目で見て、私の血もまた燃え盛るようになりました。
以来、それまでよりもチャンスに敏感になり、その機を逃すまいと、獲物を見つけた獰猛な肉食動物のように執着しました。
リスクを恐れない姿勢で挑めば、目的のものを手に入れることもあれば、致命的なダメージを受けることもありました。
今思えば、よくもまあ無謀なことをしたものだと、我ながら呆れることも多々あります。その度に、誰かに迷惑をかけ、敵をも作って来ました。
しかし、経験と年月を重ねるうちに、現代社会と音楽の業界に少しずつ順応して来たように思います。
無謀さですら、洗練を極めることができるのです。
今なお、私の発想はバカげていることばかりですし、周囲を顧みずハチャメチャなことをしでかすこともあります。
でも、そうでもしなければ、人が歩んだことのない道を進むことなどできませんでした。
冷静かつ慎重に判断を下す人のことを賢いというのなら、私はバカで構いません。
これまで私が傷つけた人たちへの悔恨の情を胸に、それに報いるためにも大胆で不屈な生き方を貫いていこうと思います。