エレクトーン演奏に際して、かなりの体力とバランス感覚が必要なことには、何度も触れて来ました。
これまで指先だけで奏でていた人たちも、私との出会いをきっかけに、体全体を使って音楽を表現するスタイルにシフトするケースが多くなっています。
でも、ただやみくもに力を込めて弾いたのでは、ダイナミックというよりは単なる乱暴な演奏にしかなりません。
では、どうしたら演奏に適したバランスのいいボディを手に入れることができるのでしょうか。
美しい演奏に必要な筋肉はいくつもありますが、最も重要なのは腰回り。不安定な姿勢で座り続けて演奏する楽器ですので、腰への負担が最も深刻です。その負担を減らす上でも、また、上体を脱力してしなやかな動きを実現する上でも、強靭な腹筋は必須です。
前にも触れたとおり、演奏中の私は、腹筋だけでバランスを保ち、重心を維持しています。それ以外のほとんどの筋肉は、打鍵のスピードと圧力をコントロールするために使い、両手両足は完全に自由な状態にしておきます。
打鍵のメカニズムは、野球のバッティングに似ています。鍵盤に指が触れる瞬間が、まさにバットとボールが触れる瞬間だと考えればわかりやすいでしょう。正確なストロークで腕を振りおろし、指が鍵盤に触れる瞬間にだけ手首から先のフォームを固定すれば、無駄のない打鍵ができるはずです。
その後のアフタータッチは、力任せにするのではなく、肩-腕-指を杖のようにして、上体全体でのしかかるようにして圧力をかけます。指ではなく、胸の中心で押し込むようなイメージです。
このイニシャルタッチ(打鍵スピード)とアフタータッチ(打鍵後の圧力コントロール)に際して体を正しく使っていないと、たちまち体が悲鳴をあげます。
最も症状が出やすいのは肩こりと腰痛。突き指や腱鞘炎よりもずっと慢性的で厄介です。
私も2005年まではひどい肩こりに悩まされてましたが、今ではほとんど肩を気にすることはありません。稀に肩こりを感じても、それは重たい荷物を持って移動するのが原因であって、演奏によるダメージは皆無です。
当時も一日8時間程度の稽古を重ねていましたが、夕方になると肩の感覚がなくなってきて、稽古を終える頃にはめまいを感じることもありました。
それが気にならなくなったのは、ランニングを日課にしてからです。心肺能力が高まったことで、持久力が飛躍的に増し、長時間の稽古でも疲労がたまらなくなりました。
次いで、筋力トレーニングの方法を変えました。これには専門家を雇い、きちんとしたプログラムに沿ったアドバイスをしてもらい、それを守りました。
腕立て伏せや腹筋も、正しいフォームで行えば、自己流でやるよりはるかに効果的です。専門家のアドバイスを得ることが難しい場合は、どの筋肉を鍛えたいのかをしっかり意識して、ゆっくりと集中してトレーニングすることが大切です。
なかなか筋トレまでは手が出せないという人は、不必要な力をとことん抜くことに挑戦してみましょう。自由落下や斥力を最大限いかして、無駄のないフォームを心がけるだけでも、肩や腰への負担は劇的に軽くなります。
疲れ知らずで楽しく弾き続けるだけでなく、弾きながら美しいフォームとプロポーションを入手できますので、ぜひチャレンジしてみて下さい。