トリノ王立歌劇場日本公演「椿姫」

26日の午前中に新潟から戻り、日中は事務作業に追われつつも、いつもより早く切り上げて、かねてより楽しみにしていたトリノ王立歌劇場日本公演「椿姫」の鑑賞に出掛けました。

「椿姫」は数あるオペラの中で最もポピュラーな作品のひとつ。これまでも様々なオペラプロダクトによる舞台を鑑賞してきましたが、今回のトリノ王立歌劇場公演には、とりわけ大きな期待を寄せていました。

トリノ王立歌劇場初の日本公演であることはもちろん、ノセダさん自ら指揮する音楽の響きや、デセイさんをはじめとした精鋭ぞろいの歌い手によるアンサンブルをどうしても目の前で鑑賞してみたかったのです。

正味約120分の舞台は、まるであっという間でした。と同時に、まるで永遠でもありました。開演の瞬間から舞台に釘付けとなり、まさにその世界に引き込まれ、はっきりと目覚めているのに、夢を見ているような時間が流れます。

モダンな演出だとは聞いていましたが、ドライだったりクールだったりはせず、ドラマに焦点を合わせた丁寧な感情表現が胸を打ち、何度も涙を誘いました。

申し分のないキャストたちは、歌声のみならず演技も見事。あれだけ体を動かしたり無理な姿勢を保ちながらも、まったく歌唱に悪影響を与えないなんて、本当に超人的だと思いました。

また、2幕1場冒頭にアルフレードが歌うアリアの時にも、ついさっきまで「ああ、そは彼の人か、花から花へ」を歌っていたヴィオレッタが、本来は休み中のはずなのに、舞台で演技に加わっていたり、2幕2場から3幕への場面転換と衣装替えが、「第3幕への前奏曲」の演奏中に観客に見える状態のままで行われるなど、ヴィオレッタへの負担が極めて大きい演出でしたが、デセイさんはまったく危なげなくやり遂げ、まさしく圧巻でした。

そして何よりも素晴らしかったのは、ノセダさん指揮の音楽です。感情表現と完全にシンクロした音楽は、実に広くて深いものでした。

椿姫がこんなにカッコいいなんて!
私は感動という表現は滅多に使いませんが、今日は心底感動しました。

カーテンコールをして完全に幕が閉じるまで20分も鳴りやまなかった喝采。私もずっと拍手し続けたので、今もまだ手がしびれていますが、まだ拍手をし足りない気分ですし、興奮して眠れそうもありません。もう一度観たいなぁ!