北海道小清水町は、知床半島への玄関口・斜里と網走の間にある、オホーツク海に面した静かな町。夏に自然の花が咲き乱れる原生花園や、野鳥の聖域と言われる涛沸湖がとくに有名ですが、人口は5,500人ほどで、くらしは農業が中心だそうです。
私がこの小清水町を縁を持ったのは、平成17年まで小清水町長を務め、任期満了で勇退した河合淳さんとの出会いがきっかけでした。
2009年7月1日に、となり町の清里町立光岳小学校に「ひとりオーケストラ」巡回コンサートで出向くにあたり、河合前町長とつながりのある公演エージェントが、ぜひコンサートを見ていただきたいとお誘いしました。
コンサート当日、前町長は他に約束があってコンサートを見ることはできないにもかかわらず、開演前に会場までご夫妻お揃いで足を運び、当時面識もなかった私にも小清水の銘菓を贈って下さいました。
そこで、開演前の会場で、前町長ご夫妻のためにエレクトーンのソロ演奏を披露し、私からの感謝の気持ちをお伝えしたのでした。
それから数ヶ月。地域の子どもたちに生の芸術に触れる機会を作ってやりたいと、小清水町で事業を営む人々が集まって、コンサートの計画が持ち上がった際、前町長の推薦も大きな後押しになり、私が第1回目の出演者に選ばれました。
それが、2009年12月5日に開催された「ひとりオーケストラコンサート」です。
前日に小清水町入りし、実行委員会の皆さんと会食。初めてお会いする方々ばかりなのに、久しぶりに会った友人と過ごしているような心地よさを感じるのは、皆さんがとてもピュアな心の持ち主であり、もてなし上手だからでしょう。コンサートに寄せる期待もひしひしと感じられ、翌日の演奏会に向けて気持ちが引き締まります。
会場は町の施設。結婚式も出来るという多目的ホールです。早朝より実行委員会の皆さんが集まって、会場を清掃したり、セッティングをしたり、とてもよく動き回ってくれます。
大人は有料ですが、子どもたちは無料。前売りチケットもそれなりに数は出ていますが、いったい何人の子どもたちが来てくれるのか予測ができません。「もしガラガラだったら、本当に申し訳ない・・・」と実行委員会の皆さんも気が気でない様子。
でも、その心配は無用でした。開場したとたんに、にわかに活気づき、用意したイスでは足りなくなって、更に増設して開演を迎えました。
いつも私は舞台に登場すると、まず客席を眺め、お客様の雰囲気や表情を出来る限り脳裏に焼き付けます。見ると、皆さん本当にピュアな人ばかりなのがわかります。親戚の集まりに迷い込んだかのような温かさです。
1曲目を終えると、数人の男性が会場から出て行ってしまいました。「ああ。私の演奏は早くも見限られてしまったんだなぁ」と、ちょっとショックでしたが、残っているお客様のために、気を取り直して演奏を続けました。
コンサートはおおいに盛り上がって、皆さんの心に音楽が沁み渡っていったのが私にもよくわかりました。
終演後、エージェントから「1曲終わって、何人が出て行きましたでしょ？」と話を向けられ、「そうでしたね。」とちょっとガッカリしながら答えると、「あの方たちはホワイエに出るなり携帯で電話を掛けて、『これが、いいんだよ！早くこいよ』と誘いを掛けていました。」と教えてくれました。
お客様が帰った後の会場は、また実行委員会の皆さんが後片付けをしてくれました。床を見ると、あちこちに泥が落ちています。皆さん、農作業の合間を縫って、このコンサートを聞きに来てくれたのだと知り、胸が熱くなる思いでした。
実行委員会の名前は「なまらキッズひとりオーケストラ実行委員会」。「なまら」とは「すごい」とか「スーパー」という意味なのだそうです。小清水の子どもたちに、スーパーなパワーを届けたいという気持ちがこもったカッコいいネーミングです。そして、実行委員会の皆さんも、なまらブラザーズと呼びたいパワフルな方々でした。
それから半年が経った頃、また秋に再演したいとの依頼が飛び込んできました。小さな町の皆さんが、こうして短期間のうちに再び呼んで下さるなんて、夢のような気分です。二度目の演奏なので、初回のインパクトはもうありません。今度こそが本当に真価を問われる機会となるでしょう。
もちろんいつだって全力投球ですが、初回の盛り上がりに負けないプログラムを用意して小清水町にうかがおうと思います。都会で演奏するのとは、まったく違った響きを感じていただけそうな気がします。
小清水町 “たったひとりのオーケストラ”コンサート第二章
日時：2010年9月18日（土） 18:00開場／18:30開演
会場：小清水町中央公民館 （北海道小清水町３区） 0152-62-3350
チケット：大人500円／高校生以下無料（幼児同伴可）
問い合わせ：北興レンタリース TEL：0152-62-4189 （担当：八木勝正）