もりおか散歩~大曲への旅路

今日は移動日なので、演奏会はありません。体力を温存する必要がないため、早朝より快晴の盛岡を1時間ほど疾走しました。

演奏で流す汗と運動のとでは、あとの気分がかなり違います。ともに爽快感や達成感がある点は共通していますが、演奏の場合は精神的な消耗が著しく、呆然とすることもある一方で、水泳やランニングの後は、むしろパワーが湧き上がってくる感じです。私の運動など単なる健康と体型維持の目的ですので、演奏ほどに気合いが入っていないというだけの話ですけれどね。

盛岡の市街はランニングするには恵まれた環境です。城址公園や川べりなど、気持ちよく走れる場所がたくさんあり、通常の歩道も広く取られているところが多いので、ランナーには天国です。

なのに、犬の散歩をしている人にはよく出会いますが、走ってる人を見かけることはほとんどありませんでした。もしかすると、走るのにもっと適した聖地があって、私がそれを知らないだけかもしれませんね。

走っていて気持ちのよかったところを、盛岡を後にする前にもう一度、カメラを持って歩いてみました。息を切らせて走り抜けるのとは違って、ゆっくりと歩くとまた違った表情が見えて来ます。

盛岡城跡には、天守閣などの建物は残っていないようでしたが、立派な石垣がかつての栄華を今に伝えています。石はひとつひとつが大きく無骨な印象。花崗岩でできているようでした。周辺は公園として整備され、見事な樹木がいくつもあり、生命の息吹を実感します。

公園の脇には中津川が流れています。水がとてもきれい。

街のあちこちにはハンギングフラワーアレンジが飾ってあるのですが、なんと橋の欄干にも美しい花が。ひとつひとつのアレンジに、職員さんが水を与えて回っている姿が印象的でした。

川端には蔦の絡まるレトロな家があります。こちらは「ふかくさ」という店で、喫茶兼バーという感じ。実は4日の夜は、こちらの店で焼うどんを食べ、窓際の席に座って、開け放たれた窓から川面を眺めていました。夜は電球のさやしい明りがステキでした。

立派な神社もありました。

盛岡を後にして、まずは昨日コンサートをした岩手町に向かいました。会場に置きっぱなしにしてきた楽器を引き取りにいくためです。今回のコンサートのために一生懸命協力して下さった方々も、休日だというのに駆け付けてくれていたので、片づけはあっという間に終わりました。

でも、その分、さよならの時間もあっという間にやって来ます。気持ちをひとつにしてコンサートを作り上げた仲間としばしのお別れをするのは寂しいもの。また会える日を楽しみに、姿が見えなくなるまで手を振りました。

それから高速に乗って、一路秋田へ。今日から金曜日までの行程は、私とエージェントと運転運搬スタッフの3人旅。私だけ新幹線で移動するようにと言われていたのですが、同じ目的地に向かうのに、同乗した方が経済的だと思い、エレクトーンと一緒に車に乗り込むことにしました。

でも、車はハイエースくん。しかも、一番安いやつです。後部座席の乗り心地は最悪。背もたれは絶壁だし、足元が狭く膝を延ばすこともできません。乗っていると、なんだか自分が荷物になったような気分になってきます。でも、我慢します。たった4時間半のドライブですから。

そう思いながら行儀よく座っていると、車にやや急ブレーキが掛かりました。と、次の瞬間、後部の荷台から私の延髄めがけてエレクトーンの足鍵盤ユニットが飛んで来ました。それなりに固定してあったはずですが、勢いが勝ってしまったのでしょう。

それで私は撃沈。しばらく吐き気が止まらずそのまま横になっていました。明日からの演奏会に穴をあけるわけにはいかない。とにかく痛みも吐き気も気のせいということにしなくては。そんな風に念じながら30分ほど目を閉じてたら、少し楽になりました。

ちょうど錦秋湖のパーキングエリアに差し掛かったので、新鮮な空気を吸ってリラックスすることに。エリア内にはちょうど都合よく、遊歩道が設けられているので、早速深呼吸がてら歩いてみました。

入口看板の外枠も栗の形をしていますが、実際、中には多数の栗の木があり、青い実をたくさんつけています。

案内に従って西展望台を目指しますが、そこはまるでけもの道。本当にこの先に絶景ポイントがあるの?と不安になりながら進むと、ありました、展望台です。

でも眺めは・・・

確かに開けた眺めではありますが、湖水を一望する大パノラマを勝手に想像していたので、ちょっと期待外れでした。

元気を取り戻したところで、ふたたび出発。今日の目的地は大曲です。リサイタルや「せんくら」を控え、毎日大曲と格闘している私には、敵陣に乗り込むような緊張感をもたらす地名です。もちろん読みは違いますけれど、「大曲へ向かう旅路」と文字で表すと、気持ちがびしっと引き締まります。

日暮れ前には大曲に到着。早めの夕食には本場手作りドイツソーセージで有名な「嶋田ハム」がやっているレストランシマダで、ハンバーグとソーセージを食べて来ました。クラシカルな内装の店内は、高級レストランのような雰囲気なのに、料理はどれも良心的な値段でした。

味もサービスも大満足で、明日も気分よく演奏できそうです。まだ延髄蹴りの吐き気が残ってますけど・・・

現実の旅では大曲に到着しましたが、私が目指す音楽の大曲への旅路は、まだまだ険しい道のりが果てしなく続くようです。