横手の風、湯沢の氷

秋田県巡回コンサートも今日で3日目。岩手県から通算すると、東北に来てからちょうど1週間が経ちました。青空と山々を渡る澄んだ空気に、すっかり慣れ親しんでいます。

私の生まれ故郷「東京」の今日は、すさまじい荒天だったとか。雪や雨、強風など、自然の猛威には極めてぜい弱な東京ですから、こうして留守にしていると一層様子が気になります。

横手は清々しい朝を迎えました。日差しの様子では、今日も暑くなりそうです。

午前中のコンサート会場は、秋田県立横手養護学校。眩しいほどの緑に囲まれた美しい環境にあります。

なにかしら体や心にハンディのある子どもたちの学校ですが、皆さんとても今日のコンサートを楽しみにしてくれていると聞いています。私も、皆さんが私の音楽にどんな反応をしてくれるのか、とても楽しみです。

コンサート会場となるのは、高等部の体育館。新しくて立派な設備です。そこに高等部だけでなく、小学生から成人まで、ほぼ全員が集まってくれるとのこと。賑やかなコンサートになることでしょう。

リハーサルをしていると、体育館脇の窓から木立が見えることに気付きました。窓に切り取られた木立は、まるで絵画のよう。そこを渡って入りこむ風が、汗ばんだ素肌を心地よく撫でてくれます。

いよいよ本番。いつもなら、最初の登場では、生徒たちのちょっとした緊張感とともに、「いったいどんなコンサートなのだろうか」と半信半疑のまなざしが向けられることが多いのですが、今日はすでにコンサートが佳境に差し掛かった時のような盛り上がりでした。もう私以外のだれかが、ワンステージ終えて、会場を温めておいてくれたかのようです。

演奏は何の不安もなく、楽しく進めることができました。一音一音に強烈な好奇心を向けて、音楽の奥深くにまでスムーズに分け入っていく感性は実に素晴らしく、私の方が乗せられているという雰囲気でした。

楽器に実際に触れて、タッチコントロールの仕組みや操作を体験してもらうコーナーでは、通常なら習得に数年は要するような絶妙なタッチ感を、一瞬でつかんで自在に操るという感覚に、私の方がビックリ。

エレクトーンのダイナミックな音に驚いてしまった子どももいましたが、それでも退場することなく、最後まで興味を保ち続けてくれたのは嬉しかったです。今回もまた気持ちのいいコンサートになりましたし、音楽の楽しさを私が逆に子どもたちから教えられたような気がします。

午後からは湯沢市立小野小学校でのコンサート。そこに近隣の秋ノ宮小学校の生徒たちが加わり、2校合同で演奏を聞いてくれました。

小野は、平安の女流歌人「小野小町」の生誕地とも言われており、近くには小町にちなんだ「小町堂」があって、私も以前一度訪ねたことがあります。

今日の小学生たちはシャイな一面と快活な一面を両方見せてくれました。最後に代表で何人かが感想を発表してくれたのですが、初めて聞いたけれど気に入った曲があったとか、自分もピアノを習っているので、これからは心に響く弾き方をしていきたいなど、私の思いをしっかりくみ取ってくれていて、嬉しく思いました。

小野小学校を後にしてからは、同じ湯沢市内のホテルへ向かいました。今日はハイエースくんでの移動も延べ50キロ程度と、昨日までに比べたら楽なものです。でも、首の痛みは日に日に増してきたような・・・

ホテルで出迎えたのは、くまさんが弾きマネをしている自動演奏ピアノ。ドビュッシーが流れていますが、かなりユニークな節回しの演奏です。酔っぱらってるのかな?

ところで、湯沢といえば、秋田犬のさくら。さくらのブログはこちら。癒されますよ。さくらも演奏を聴きに来てくれないかな。

さて、いつもよりも早めにチェックインできたので、もらった花を飾ってから、ずっと前に一度連れて行ってもらったことのあるかき氷屋さんを探し求めて、市内を冒険することにしました。

確か駅前の商店街だったような・・・あやしい記憶をたよりに商店街を歩いていたら、ありました!「高市青果店」。店の名前はまったく記憶にありませんし、店先や店内の様子も思い出せません。でも、かき氷屋さんが、そうそうあるとも思えないので、以前訪ねたのはこの店で間違いないでしょう。

湯沢っこには有名な店のようですが、私が行った時は他にお客はいませんでした。ひとりで入って「宇治金時ソフト(410円)」を注文しました。

「海の家」を彷彿とさせる雰囲気の店内で待つこと数分。運ばれてきたのは、レトロなサンデーグラスに山と盛られたかき氷。差し込まれたスプーンを抜く時にも、さらさらっと氷がこぼれおちます。それを拭くように、ちゃんと布巾も添えられました。

なんとも懐かしい味。のんびりとした店の雰囲気もマッチしています。目的がひとつ達成できたことに満足しながらホテルへ戻ると、窓からは美しい夕暮れが見えました。明日もまた絶好調の演奏が続きますように。