小清水町 なまらキッズ ザ・ひとりオーケストラコンサート

網走での朝は、雨の音で目を覚ましました。まだ夜明け前。早起きの私にとっても、いつもより早い時間です。ホテル客室の空調はまだ冷房モード。デュベにくるまっても寒いので、夜明けまで眠ることも諦め、身支度を整えてから、改めて楽譜の作成に勤しみました。よく計算してみてら、結局1時間しか眠らなかったようです。

楽譜がひと段落ついた時、ちょうど朝食がスタートする時間だったので、そのままレストランへ向かいました。普段は卵料理は食べないのですが、今日に限っては温かいものが欲しくなり、トーストとフライエッグにしました。

朝食後、このまま起きていてもよかったのですが、今日は夜がコンサート。やはりゆとりある演奏をお届けるするには、少し休んでおいた方がいいと思い、朝食後に1時間ほど仮眠しました。やがて小清水町からの迎えが到着し、ホテルを出発。そしてすぐさま寄り路のリクエストをしました。

目的地は「デリカップ」。半島ドライバーさんがコメントを寄せて下さったのを読んで、どうしても立ち寄りたくなってしまったのです。シンプルな店先とは趣きの異なる店内は、レトロな調度品で埋め尽くされ、懐かしさと心地よさが一瞬で包み込んでくれます。

店の奥にはピアノやウッドベースがあり、その上には古びたシャンデリアとともに、使えなくなったホルンをシェード代わりにしたランプが、優しい光を放っています。

レコード(CDじゃないですよ)から流れる上質なジャズがまた、うっとりとした雰囲気を醸します。モダンな空間でいたずらに流すジャズと違い、空間と音楽が絶妙にマッチして、互いを引き立て合います。ストレートコーヒーでモカを。そして、少し早目のランチに、ホットエッグサンドを注文しました。

雨の午前中だというのに、店には客が絶えず、人気のほどをうかがわせていました。ステキな店を教えて下さった半島ドライバーさんに感謝です。気分よく小清水町に向けて出発。

途中、グレーのグラデーションのみで描画されたようなオホーツク海や、小清水原生花園を車窓に眺め、今や観光スポットとなったJR北浜駅に立ち寄り、すっかり小旅行を満喫してから会場入りしました。

会場ではすでに準備が始まっています。昨年12月以来の再会となる「なまらキッズ」の皆さまと挨拶を交わし、早速打ち合わせやセッティングを。今日も一丸となってコンサートの成功に惜しみない力を注ぎます。

ステージには大きなスクリーン。今回のために小型CCDカメラを用意してくれたので、指先の繊細な動きまで映し出すことができます。

バックには今回のコンサートの横断幕。ワインレッドのカラースキームがエレガントさを感じさせます。こうしたひとつひとつのことに皆さんの期待が込められていると思うと、今日もまた演奏への気持ちが熱く盛り上がって来ます。

リハーサルには十分な時間があったので、リサイタル用の曲も稽古できました。なかなかいい感触です。ギリギリまで弾き続けるのもひとつですが、今回の公演に際し、スポンサーにもなって下さっている小清水神社に参拝したかったので、リハーサルは途中で切り上げることにしました。

小清水神社ではちょうど外出から戻った宮司と会えたので、わずかな時間ですが挨拶を交わすことができました。新しくなった拝殿にお参りし、今日のコンサートの成功と、小清水の皆さんの幸せを祈りました。

会場に戻ると、すでにお客様が集まり始めていました。私も着替えや支度に入ります。

さて、今日のプログラムをどうするか。実は客層が読めないので、曲を決めることができずにいたのです。子どもたちが多いのか、大人ばかりか、音楽への関心や造詣はどうかなど、不確定要素が多いので、今日のお客様にとって一番価値のあるプログラムで演奏するには、ステージに行ってから考えるのもひとつの手。

とりあえず、50曲ほどを用意してステージに向かいました。舞台から客席を見渡して最初に感じたのは、今日のお客様はどんな音楽でも受け止めてくれるという安心感です。

「たったひとりのオーケストラ」というタイトルに恥じない、シンフォニックな演奏を中心に、プラスキッズメニューや、得意のウルトラモダンクラシックを加え、アンコールを含めて14曲を演奏しました。

途中は子どもたちをステージ上に招待し、間近で聞いてもらったり、一緒に手拍子でアンサンブルしたりと、スクールコンサートでお馴染みのワークショップも取り入れて。子どもたちに囲まれていると、たちまち私にパワーがチャージされ、いつまででも弾いていられるほど元気に。おかげで気分よく演奏することができました。

終演後は「なまらキッズ」の皆さんと小笠原旅館の広間で打ち上げ会。寿司や蟹などを囲みながら、和やかなひとときを。

「なまらキッズ」の皆さんはとても意欲的で行動派。地域の皆さんのために、これからも芸術文化に触れる機会を提供していきたいと熱く語っていました。小清水の大自然と音楽を同時に味わえる企画など、夢のような話に花が咲きましたが、夢を持ち続けていれば、いつかきっと実現することでしょう。

小清水町の皆さま、遠方より駆け付けて下さった皆さま、そしてコンサートにご協力いただいたすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。