小清水から大阪へ

小清水町の宿で迎えた朝。窓から外を見ると今日もあいにくの雨です。朝食の前にランニングをと思っていましたが、転倒を恐れ断念。その代わり、源泉掛け流しの温泉大浴場を独り占めして、ゆっくりと体を温めました。これは首にもよさそうです。

朝食を終え、出発の準備を整えていると、フロントから電話が。なんと、小清水町と私とを結び付けてくれた河合前町長が、奥様を伴って訪ねて来て下さったのです。

出発予定をご存知だったとみえ、その直前のちょうどよい時間を見計らって訪ねて下さるとは、さすが気配りの行き届いたお人柄。私がひそかに気に入っている小清水銘菓「I love こしみず」を差し入れて下さいました。

再会を約束しつつも、今日の別れを惜しみ、小清水町を後にしました。この小清水の雄大な景色ともしばしのお別れです。

女満別空港から東京経由で大阪へ。窓の外は雲の海でした。

伊丹空港からタクシーに飛び乗り、新大阪駅近くのメルパルクホールに急ぎました。

今日はジュニアエレクトーンフェスティバルの大阪ファイナル大会、その小学生高学年部門と高校生部門が開催されていますが、出場する高校生の何人かに稽古を付けている縁があるので、活躍を見届けるために、私もはるばる駆け付けて来ました。

私はある意味「部外者」ですので、担当講師や付添ではなく、チケットを購入して入場します。

エントリーしている人の中には、この大阪ファイナルに初出場の人も、常連になっている人もいますが、全日本大会への切符を目指して、それぞれにこの日のために準備してきた演奏を披露します。

フライトの都合で、高校生の部からの鑑賞でしたが、さすが大阪ファイナルともなれば、全員が見事な演奏でした。演奏を心底楽しんでいる様子や、選んだ曲に対して深い思い入れを注ぎながらの演奏に触れ、すべての出場者に大きな拍手を送りました。

中には私がお金を払ってでももう一度聞きたいと思うような素晴らしい演奏もありました。

私が稽古した人たちは、残念ながら全日本にコマを進めることができませんでしたが、それぞれに貴重な経験をすることができたはずです。もちろん、最高賞を目指して努力してきたのですから、悔しさがないわけではありませんが、この落胆さえも糧の宝庫として役立ててもらいたいと思います。

そんな中、一番悔しい思いをしているに違いないのが、今日のエントリーを辞退せざるを得なかった子でしょう。数日前までは「今年こそ心に響く演奏を」と張り切っていたのに、病に倒れドクターストップ。幸い大事には至りませんでしたが、それでも努力を重ねて手に入れた大阪ファイナルへの出場は叶いませんでした。

どれほど涙を呑んだことか。でも、一番貴重な経験をしたのはその子かもしれません。弾けないという苦しみは、裏を返せば「弾く喜び」です。それを身を持って体験した今回。この悲しみを乗り越えた先には、順風満帆に来た人にはない深い味わいが備わることでしょう。来年の活躍に大いに期待したいと思います。

このようにエレクトーンに深い情熱を注いでいる子どもたちが、より輝ける舞台が全国にたくさん待ち構えているような時代が来ることを、心から祈っています。