7/7大阪茨木での演奏会には、多くの皆さまにご来場、ご声援いただき、ありがとうございました。昨年までと比べて、また一歩進んだ演奏会をお届けすることができ、とても充実した気分です。
進歩の理由はいくつもありますが、私が感じた主なものはみっつ。まずは波多江史朗さんに加わってもらったことで、ソロでは醸し出せないアンサンブルの妙をお伝えできたこと。そして、20才になった菊池玲那の成長。もうひとつは、お客様が客席から送ってくれる力が更に大きくなったことです。
そこに細かな要因が複雑に絡み合って、リハーサルではまったく予想もつかなかった心地よい空気がホールいっぱいに広がりました。
演奏会は時間通りに開演。この180席のコンパクトな空間は、これで三回目ですが、これまで以上に温かく、期待も強く伝わってきました。第一部のソロは、自分の集中力さえ途絶えなければ、必ず安定した演奏ができる選曲をすることで、なるべく全体の世話役として振る舞えるようにしてあったのも、プラスに働いた実感があります。
トークの時にはお客様の表情がよく見えるのですが、優しいお顔が並ぶ中に懐かしい人や来てくれたらいいなと思っていた人を見つけては喜びが膨らんでいきました。そして、いくつか残っている空席には、来られなかった人が座っていることを思い浮かべては心の支えに。それが弾き慣れた作品を、特別なものに彩っていきます。
玲那のソロで第一部を堂々と締めくくり、続く第二部は波多江さんと玲那のデュオでスタート。プロとのデュオは初めての玲那が、どこまで波多江さんと一体となった演奏ができるか、私は袖でまさに固唾をのんで見守っていたのですが、波多江さんの見事なリードに助けられつつも、玲那の自発的なアプローチでアンサンブルのバランスが融和する瞬間が次々と見られ、期待以上の演奏を聞くことができました。
そして、後半は波多江さんと私のデュオ。本番だけにしか出現しない特別な空気と、刻々と変動する駆け引きを楽しみながら、絶妙なアンサンブルができたと思います。とにかく一緒にやっていて幸せ!音楽は素晴らしい!と胸が躍るひとときでした。このように、いつもより感情が動いたのは、七夕だったからでしょうか。
短冊に「もっと神田せんせいと会えますように」と書いてくれた少女は、お母さまに連れられてはるばる来場し、少女の願いは叶えられました。玲那も波多江さんとの共演で、新しい成果を掴み取りました。私はアンコールの「たなばたさま」を弾きながら、会えた人、会えなかった人、私が知る人、私を知る人、みんなの幸せを強く願いました。今日も音楽に生きさせてもらった。それだけでも幸せなのに、喜びまで与えてもらった。だから、もっともっと音楽のために尽くしたいです。