第12回中国上海国際芸術祭の2公演を昨日までに終え、その大きな手応えを実感しながら、とても気分よく一日をスタートすることができました。
今日だけは終日オフになる予定でしたが、公演翌日にも関わらず、その成功を受けて次の公演が幾つか決まったので、日中は会場下見や打ち合わせに奔走しました。
ランチタイムは芸術祭の総督の招待で、開業前の高級ホテル内にあるダイニングで、フランス料理を味わいました。これまでというもの、上海を訪れている間は常に中国料理オンリーで来たので、上海で味わうフランス料理は初めて。
正直、上海でのフランス料理にはあまり期待していなかったのですが、焼き立てのパンから立ち上る小麦の香りが漂って来た瞬間、これは本物だと感じました。料理もサービスも洗練されており、中国料理的なスパイスがちょっぴりエキゾチックでした。
なんとこちらのホテルは全室が独立したヴィラで、開業したら1泊3万元、日本円で40万円ほどだそうです。ちょっと手が出ません。でも、大都会の真っただ中にありながら、とても静かですし、緑豊かな環境。単に高級というだけでなく、本当の豊かさや心地よさを感じさせる、東京にはないタイプのホテルでした。
続いては次回のコンサート会場として予定されている上海銀行ビルを下見に。ガラスに囲まれた巨大なアトリウム空間には、10メートル以上の高さから垂直に落ちる滝があり、その滝壺から大理石の階段を延々と水が流れるデザインになっています。
その水の流れの上に特設ステージを作るところまでは決まったのですが、その先の空間演出をどうするかを、これから舞台美術の専門家とともに練っていくことになりました。撮影禁止のため、ご紹介できないのが残念です。
もう1か所別のコンサート予定会場を見てから、昨年オープンしたばかりのザ・ペニンシュラ上海へ。今回の公演には日本から私の母や叔母も来ているので、ここで落ち合ってアフタヌーンティをしました。
東京のペニンシュラよりもクラシカルな造りで、スケールも大きく、ペニンシュラのイメージに相応しい雰囲気です。ロビーラウンジにあるバルコニーからは、弦楽四重奏やピアノの生演奏が聞こえて来ます。
夕暮れとともにペニンシュラを出て、裏手にある再開発地区を散策しました。まだ人通りがほとんどなく、整備されたばかりの美しい街並みを独り占めした気分でした。
続いてこちらも整備が済んだばかりの外灘で、黄浦江に行き交う船や対岸にある浦東の高層ビルを眺めながら、ゆっくりと歩いてみました。
18時半になると、外灘の建物のライトアップが始まりました。この頃には、外灘遊歩道は花火大会の時のような賑わいに。さまざまな国から訪れた人々が、最も上海らしい景観を眺めている様子もまた、深い感慨を起こさせてくれます。今回の旅に同行した家族も喜んでいました。
そして、夜は芸術祭にもエントリーしている「越劇」を観賞しました。京劇や昆劇とはまた一味違った雰囲気の越劇。演じるのは全員女性で、中国版宝塚歌劇団といったところでしょうか。ストーリーも音楽も大変親しみやすい内容ですし、英語と中国語の字幕もあるので、よく理解できました。
終演後は古い洋館を改築したレストランで、上海にいる私の友人たちと食事会をしました。中国語、日本語、英語が飛び交うテーブルは、年齢も20代から80代まで幅広く、まさに国際交流のステージです。
その中のひとりがBAOのメンバーとして日本での演奏経験も豊富な二胡奏者「ツァオレイ」。来年には私と一緒に日本でコンサートをすることが決まっているので、その内容についても相談しました。
連日のタイトで欲張りなスケジュールはかなりハードですが、これが今の上海のテンポ感です。エキサイティングなエネルギーにあふれ、上昇気流が渦巻く街は、今の私にぴったりフィットしているのかもしれません。