3日間滞在した下甑島。今日はいよいよ島を離れます。ここは、まるで無人島のような静けさと、人が暮らす島ならではの温もりが同居する、現在の竜宮城。ふたたび訪れる日は廻ってくるのでしょうか。せめて今日というひとときを脳裏に焼き付けて帰りたいものです。
宿の名前は竜宮の郷。目の前にはウミガメに乗った浦島太郎のモニュメントがあります。近くの橋は竜宮橋。周辺には竜宮伝説をデザインモチーフにした建造物が多くみられます。
その由来は、ここ手打の浜に毎年産卵にやってくるウミガメにちなんでいるようです。朝食を済ませ、船の出航までの間、歩けるところまで歩いてみることにしました。
宿から少し歩くと、穏やかなビーチが広がっています。この季節のビーチに人影はほとんどありません。しみじみと眺めると、何かを拾っているおばあちゃんのシルエットが見えました。
その少し先にはバス停がありました。ここにもおばあちゃんがひとり。どうやらバスを待っているようです。ほどなくやってきたバスに乗ってどこかへ出かけていきました。そして、バス停には誰もいなくなりました。
海沿いの道から、少し路地を入ってみましょう。多くの家は平屋ですが、立派な塀や庭が印象的。植わっている木々も、ハイビスカスやブーゲンビレアなど、どこか南国的です。
のんびりと散策していると、民家ばかりだったのが、にわかに商店なども見られるようになりました。どうやら、手打地区の中心部に入ったようです。
すると、両側に丸石を積み上げた立派な石垣のある通りに出ました。これが「武家屋敷通り」と呼ばれるところです。
そこには下甑郷土館があるので、見学しようかと思っていたのですが、残念ながら休館日でした。
そのまま手打の街並みを歩いていると、何人もの島民と出会いました。その全員が見知らぬ私にも「おはようございます」とほほ笑みかけてくれました。ほとんどがおじいちゃん、おばあちゃん。ひとりだけ小学生がいました。きっと昨日演奏を聞いてくれた子に違いありません。
帰りは誰もいなくなったビーチの砂の上を歩いて宿へ戻りました。甑では今、ツワの花があちこちに咲いています。
港へは宿の車が送ってくれました。途中、こんな旅館が。
ステージアの製造元と、何か関連があるのでしょうか。きっとありませんね。
港もまた静けさに包まれていました。海をのぞくと港の底までよく見え、小魚たちが群泳しています。対岸の崖がまた美しく映えています。
やがて高速船が到着し、数名の客を降ろし、20名ほどの客を乗せて出航しました。
何も知らない私たちは、混雑を恐れて指定室を確保してあったのですが、その必要はまったくないほどに、船内は余裕の空席でした。それでも、ビジターにとってありがたかったのが、指定室にしか備わっていない展望デッキです。
高速艇シーホークで、海風を肌で感じられるのはここだけ。遠ざかる下甑をしばし眺めてから船内に入りました。
ところが波多江さん以外、若い連中は気分がすぐれない様子。今日は風が強く、海面には白波が立っていますので、船もよく揺れます。私は平気なので、ほとんど展望デッキから海を眺めて過ごします。
串木野港に到着すると、迎えのタクシーが待っていました。波多江さんの提案で、運転手さんも一緒に串木野名物まぐろラーメンを食べることに。最初とある店に並んだのですが、運転手さんが道行く人に尋ね、美味しいと評判の店を教えてもらったとのこと。
改めて向かったのが、「蘭蘭」という大衆中華料理店です。
ラーメンといえば脂たっぷりを想像しますが、こちらは魚ダシでさっぱりと。ワサビをアクセントに味わうユニークなラーメンです。
夕食は薩摩川内駅近くにある肉料理「かんだ」へ。これも波多江さんのプランです。
昨日のうちに予約をしてあった、鹿児島黒豚のしゃぶしゃぶでディナーです。黒豚はもちろんですが、たっぷりの野菜が嬉しい夕食でした。
リラックスした共演者たちと一緒に過ごす時間も心地よいものです。明日からは薩摩川内市内の学校でコンサートを行います。