雨の霧島と縄文スピリッツ

下甑島以来、鹿児島で初めて雨が降りました。早朝は曇り空で、桜島からの噴煙と雲が融け合って、不思議なグラデーションを作っていました。

今日は霧島市内でのコンサート。1回目はかつて海だったという平地へ、2回目は山が連なる地域へ出掛けて行きました。

霧島は温泉がとくに知られていますが、茶どころとしても名高く、市街地にも茶畑が見られました。

霧島の子どもたちは、とても穏やかでおとなしい印象でした。キッカケがつかめるまではじっと構えているのですが、私たちが何かを仕掛けると、それには柔軟に応えようとしてくれます。

今日一番目に焼き付いているのは、ピアノソロを演奏してる米津さんを見つめている子どもたちの眼差しです。

目を丸く見開いている子、米津さんのダイナミックな動きを弾き真似する子、一緒に体を揺らして楽しんでいる子など、聴き方にもそれぞれ個性が感じられます。

アンコールで波多江さんが客席に降りていくと、子どもたちは大はしゃぎ。そんなほほえましい光景を見ていると、悲痛なことなどみんな忘れてしまいそうでした。

昨日大阪へ帰った石川さんが抜け、トリオでの演奏となったわけですが、はやり初回は、石川さんの笑顔や真剣な表情が目に浮かんで、ちょっと寂しい気分でした。

時折、石川さんがいた場所にアイコンタクトを投げかけたくなりますが、そこには何もありません。

それ以前に、私には重要な役割がありました。今日からのトリオ用に、抜いてしまったリズムセクションを復活させるという作業です。削除するのは一瞬ですが、復元するのは楽ではありません。

それをセッティング終わりから開演までのわずかな時間に完成させ、なおかつテンポやタイミングの確認を全員でリハーサルする必要がありました。

どのようになるか正直心配でしたが、波多江さんも米津さんも、素晴らしい順応性を持っています。普段打ち込みリズムで演奏することなどないはずなのに、たった1回の合わせで、完ぺきにタイミングをつかんでくれました。

さらに、喉を枯らして声がうまく出せない私を、ふたりとも巧みにフォローしてくれたので、2回のステージとも無事に終わらせることができました。

ホテルに戻ってからは、名古屋の進行上の作戦を練っています。ちょっとしたタイミングで、雰囲気や流れが台無しになりますので、緻密な計画が必要です。

ちょっと頭がオーバーヒートしたので、ホテル館内にある遺跡の展示コーナーを見物しました。

現代から縄文草創期まで、時代をさかのぼるようにして、丁寧な解説と土器などの展示物が並んでいるのですが、古代文化の成長と変遷がわかりやすく解説されており、なかなか興味深い内容でした。

ホテル内にこうした展示があるのはとても珍しいと思います。

それにしても、古代の人が作った土器の数々は、直感的なデザインながらも、鋭いインスピレーションに満ちています。

この頃、まだ音楽という概念は存在しませんでしたが、この器たちから放たれるスピリッツは、私の封印しつつある創作意欲を再燃させようと働きかけて来ます。