an die freude

昨晩泊まったホテルでは、とてもとても狭い客室と、隣室から聞こえてくる盛大ないびきに悩まされ、ほとんど眠れず。あの豪快さからして、野獣のような男以外には考えられないのですが、巨体に狭い部屋と小さなベッドでは、さぞや窮屈だろうと同情せずにはいられませんでした。

午前中からスーパーレッスンをして、駅にあるうどん屋で遅いランチを。「舞茸天ぶっかけ」を注文しましたが、コシのあるうどんとサクサクの揚げたて天ぷらは、どちらもとても美味でした。

思えば、私は断然蕎麦派で、「うどんなんて大嫌い」とまで豪語していたのに、香川に通うようになってからは、ずうずうしくも「うどん大好き」などと言うようになりました。もっとも、今なお香川でしか食べませんけれどね。

瀬戸大橋を渡り、新幹線に乗り換えて一路新山口へ。300キロ近い距離があるのに、1時間少々で着いてしまうということは、本当に300キロで走っているんですね。

新山口駅に着いたら早速リハーサル会場へ向かいました。今夜は明日のコンサートで共演をする合唱団とのリハーサルです。

その合唱団は「アン ディ フロイデ」。その名からも想像される通り、第九を歌うことを目的に結成された合唱団です。最初の共演は3年前の12月でしたが、その実現には紆余曲折がありました。

エージェントIZUを通じて第九のオーケストラパートをエレクトーンで演奏する依頼がありましたが、当時の私は「人類の最高傑作」だと思っている第九を、ひとりで演奏するなんて冒涜に当たるような気がして、お断りする決心をしました。

ところが、何度も熱心にお声をかけて下さり、とうとう私もその気になってしまいました。なのに、私はすぐに後悔するハメに。やはり第九の壁は厚かったのです。

1ヶ月ほど他の曲を忘れ、第九に専念して稽古を進めたのですが、あのパワーの渦のような味わいが、どうしてもひとりでは演じきれず、途方に暮れる日々でした。

それでも、本番は本当に幸せな時間でした。苦悩から解放してくれ、全員の魂をひとつにまとめ上げてくれたのは、第九の音楽でした。それから2度目の第九共演があり、今回は3回目となりますが、第九ではなくシベリウスやバッハを演奏します。

今回は急に共演が決まったこともあり、全員が参加とはいきませんが、それでも30名以上の団員が集まってくれました。アマチュアの皆さんですが、とても勘がよく、テンポやタイミングなど、私からの要求にもすぐさま応えてくれます。明日もまた会場でしっかりリハーサルをして、本番にのぞみます。

今夜のホテルは宇部。山口市内は明日のマラソン大会の影響で、ホテルはどこも満室だったため、車で1時間も離れた街に泊まることになりました。

でも、隣に野獣はいないようですし、昨晩の部屋より倍以上広いので快適です。差し入れの「うさぎ饅頭」で一服したら、25日用の宿題に取り掛かるとしましょう。