山口県でのコンサートは2月以来、10か月ぶりのこと。久しぶりにお目に掛かるお客様と、今回初めて出会うお客様と共に、音楽に包まれるひとときを過ごすことを、心から楽しみにしていました。
ホテルを出発したのは午前10時。いつもに比べたらゆっくりの出発でしたので、朝からホテル周辺を走って来ました。ちょうどホテル前には音楽をモチーフにした銅像が設置されているのですが、それらもクリスマスの装いに変身しています。
ゆっくりと支度を整えてから、迎えの車に乗って、約1時間のドライブで会場となるカリエンテ山口に到着。リハーサルは午後からの予定でしたが、スタッフが会場準備を手際よく進めてくれたおかげで、11時過ぎにはソロのリハーサルを始めることができました。
当初の予定だと、合唱との合わせをするのが精いっぱいで、ソロは音響チェックくらいしかできないだろうと思っていたのですが、ほぼ全曲を弾いてみることができたので、本番に向けての安心感が格段にアップしました。
今回の音響担当スタッフは、もうこれまで何度も山口県内コンサートでご一緒した人なので、何もリクエストをしなくても、私の好みを理解して、ベストな環境を作ってくれます。それにより私は音楽に集中でき、とても助けられました。
12時半からは合唱とのリハーサル。入場のタイミングや、楽譜を開く際の合図、お辞儀の手順など、シンプルなことにも入念な確認を行います。
合唱団の皆さんはエレクトーンとの共演に慣れているわけではありませんので、スピーカーから発せられる音が聞こえるかや、指揮者不在下で、私が演奏しながら送る合図がキャッチできるかなど、不安が少なくないはずです。
不安を残したままでは気持ちよく歌ってもらえませんので、問題点があれば、遠慮なく申し出てもらい、この場で解決することを考えていたのですが、合唱団の方々はのみ込みが早く、不安はほどなく解消されました。
リハーサルは予定よりも15分ほど早く終了。合唱団の方々は別室でおさらいをするとのこと。私は楽屋に戻り、本番の支度に入りました。
開場時間となり、ホール内にはどんどんお客様が集まって来ました。開演時間には用意したイスがほとんど埋まりましたが、それでもまだお客様は増え続けています。
当日券でご入場のお客様も多く、急遽イスを増やしましたが、それでも追いつかないほどだったようです。
ステージでは、まず朗読劇が披露され、続いて私のソロステージがスタート。お客様が集中してくれているのはよくわかるのですが、ややリラックス感に欠ける雰囲気。
今日はアットホームでハートウォーミングなコンサートにしたかったので、緊張感や堅苦しい雰囲気を和らげる必要を感じました。少しフランクなトークなどを盛り込みながら、変化に富んだプログラムで演奏しましたが、次第にリラックス感が生まれて来て、だんだんと会場全体が一体になりました。
後半はアンディフロイデの皆さんをステージに招き入れ、3曲をアンサンブル。40名近い合唱団の皆さんと、呼吸だけでタイミングを合わせていくのは楽なことではありませんが、リハーサルの成果もあって、スムーズにできたと思います。
全員で心をひとつにしながら演奏しているという実感に包まれ、とても幸せな気分で弾くことができました。
プログラムを終えたところで、実行委員会の皆さんから花束を頂きました。そしてお客様からも多数の花束が届けられ、リサイタルのような充実感でした。
最後にアンディフロイデの皆さんと、第九の一番有名な部分を高らかに演奏し、コンサートはフィナーレ。一足先に舞台袖に戻り、続いて戻ってくる合唱団の皆さんひとりひとりに労いの言葉をかけました。
ステージに誰もいなくなっても、まだ拍手を続けて下さったので、私ひとりでステージに戻り、クリスマスソングをアンコール演奏して、幕となりました。
今回のコンサートがこうして成功に終わったのは、会場にいたすべての人のおかげですが、とりわけ実行委員会の皆さんは、本当によくやってくれました。
実行委員会のほとんどの方々は、スポットを浴びることもなく、文字通り縁の下の力持ちでしたが、コンサートを成功に導くために、労を惜しまず奔走してくれました。そして、それを苦にせず、非日常として楽しんでくれたのです。
その実行委員会の皆さんが、お帰りになるお客様の笑顔を見て、心底嬉しかったと口を揃えているのを聞き、胸をなでおろした次第です。
私がしたことといえば、ステージで演奏しただけ。もちろん、そこにはありったけの情熱を注ぎましたが、それは私の宿命でもあります。
せなばならぬことではないのに、最後まで泣き言も口にせず立派にやり抜いた実行委員会の皆さんにこそ、盛大な喝采を贈りたいと思います。
そして、たくさんの華やかな花束に押しつぶされそうにして届けられた小さなフラワーアレンジメント。野球少年が自分の小遣いで私のために仕立ててくれた贈り物だそうです。抱えきれない花束のように嬉しいサプライズでした。