ワイキキでの目覚めはいつだって爽快です。
今朝のブレックファストは、クラブケーキを使ってアレンジした「Crab Benedict」と、フレッシュオレンジジュース、そして何かの手違いかと思うほど苦いコーヒー。
やっぱりこの店は大人気。それはそれで不思議な人気ぶりですが・・・
朝食を済ませたら迷わずビーチに直行。日が傾き始めるまで、泳いで泳いで、そして時々寝ころんで。一度シャワーのような雨が通りましたが、そんなことは気にしない、気にしない。すっかりレアレアスタイルに溶け込みました。
砂浜に直接寝そべると、焼けた砂が肌に熱いのではと思っていましたが、不思議とひんやりしています。波打ち際に近いところにタオルを敷いて、海面を眺めているのも悪くありません。
海から見るワイキキの風景もなかなか。
日本の海水浴場のように騒々しい音楽は聞こえてきませんし、調子に乗って人から鬱陶しいと思われるような行動をする人もいません。つまりビーチにさえ品格が伴っているのです。
さて、今日の本題はグルメレポートですから、あまり話題を逸らさないようにしましょう。
今夜のディナーに訪れたのは、ワイキキのはずれ、比較的静かな環境にありながら、目の前に砂浜と海が広がるというロマンチックなロケーションにあるレストラン「ミッシェルズ」。
1962年のオープンといいますから、かれこれ半世紀近くの歴史があり、ハワイでも指折りの名店として絶大な人気を誇っています。マンションの1階にひっそりと佇んでいるので、通りすがりの人が立ち寄ることもなく、とても落ち着いた環境です。
何ヶ月も先まで予約が取れないということはありませんが、行くと決めたら、早めに予約した方がいいようです。特に、心地よい窓際の席は人気が高いため、すぐに埋まってしまいます。
予約時間は午後6時半。ちょうど陽が落ちて、あたりが暗くなり始めた頃合いでした。でも、店の中はすでに満席の賑わい。シャンデリアがきらめくデコラティブな内装と、全開された仕切りのない窓から眺める風景とのコントラストにワクワクさせられます。
今回は運よく窓際に座ることができました。海はすぐ目の前。プライムオーシャンフロントレストランという言葉にも説得力があります。
寄せる波音とそれに融け合う甘いギターの調べ、そして客や給仕たちが放つ様々な音や活気。加えてオーシャンフロントの解放感。レストランとして最高の雰囲気に溢れています。まだ何も食べていないのに、すっかり満足してしまいました。
そこに担当給仕が来て、食前酒を勧めました。連れのひとりはグランワインを所望。すると給仕の口からは、よどみなく各種ワインの説明がありました。
私はシャンパンを注文。産地はどこが好みかと尋ねられたので、シャンパーニュ以外にシャンパンはあるのかと言うと、ニッコリ笑ってベストのものを用意すると答え立ち去りました。
窓の外に広がる景色は刻々と表情を変えていきます。食前酒が揃ったところで、料理のメニューが出てくるより先に、アミューズが出て来ました。クラブケーキ・・・今日は2度目です。
アミューズが下がってからメニューが差し出されます。この頃にはかなり暗くなっており、店内の照明もまた控えめなため、私以外は皆メニューが見えないと言って見ることさえ放棄。
そこで、私がすべての料理を読み上げながら説明するという役目をし、全員の注文を把握したところで、担当給仕に合図をしてオーダーを受けてもらいました。
それぞれ好みの品をアラカルトで注文しましたが、こちらもボリュームはたっぷりだと聞いていたので、前菜と主菜の2皿としました。
私の前菜はこの店のスペシャリテにもなっている「Michel’s Lobster Bisque」。店内が暗いので料理写真も暗くなってしまい、見づらいことをお詫びします。昨日の「サレントス」はカメラが機能しないほどの暗さでしたが、今日はせめて雰囲気だけでも・・・
このスープは「Tableside Starters」というカテゴリーの中にあって、テーブルサイドで仕上げをするパフォーマンスがあります。目の前でロブスターをフランベし、最後にコニャックを燃やして香り付け。スープは濃厚で、塩味が強く感じられました。
スープが済んだら、口直しのシャーベットが振舞われました。
続いてメインディッシュ。給仕に勧められた今日のスペシャリテ「Fresh Catch “En Papillote”」です。その日入荷の新鮮な魚を紙包みで蒸し焼きにしたもの。今日は「ハマチ」だそうです。
こちらもテーブルサイドで仕上げがされました。さっぱりとした味わいだったので、量の割にはすんなりときれいに食べきることができました。
この他に、母が食べきれなかったブイヤベースの残りが回って来ましたが、それがハワイに来て食べたものの中では一番美味しかったです。
デザートも給仕おススメの一品を。こちらもテーブルサイドパフォーマンス付きの、「Hawaiian Apple-Banana Flambe」。
酸味のあるハワイ産アップルバナナを、たっぷりのブラウンシュガーとバターを焦がしたソースにからめながら火を通していきます。
最後に燃えたダークラムをオレンジの皮から垂らし、それをバニラアイスクリームと共に盛りつけて完成です。
甘さに対する形容詞としては適切ではないかもしれませんが、一言で言うと「ゴージャスな甘さ」でした。これだけ甘いと、お腹も一気に落ち着きます。
トータルでの印象として、料理の質はどんなに頑張っても東京のクオリティには遠く及びません。でも、東京には、ロケーション的にもサービス的にも、これほど開放的で心地よい店はありません。
また、この店のスタイルを模して、日本で失敗に終わった店はいくつもありました。この店はハワイという風土に根ざして開花したもので、にわかに上辺だけ真似ても、この店で過ごす楽しさや特別な気分を再現することは不可能でしょう。
ここだからこそ味わえる価値ある時間を求めて、連日こうして客が押し寄せているのだと実感しました。帰る頃にもまだ満席。賑わいはまだまだ続くようです。