自分をけなして魂に火を付ける

なんでザマ。まったくもって話にならないひどい演奏。姿勢は悪いし、表情も空っぽ、音楽設計もめちゃくちゃ。ただがむしゃらなだけで品性のかけらも感じない。これが自分だなんて何とも情けない・・・。

昨晩届けられた一枚のDVD。それには2010年10月5日の神田将リサイタルの一部始終が録画されています。せっかく気分よく一年をスタートし、晴れやかな気分でいるのに、今は観たくない。そんな本音をふっ切るように、反省は早い方がいいと決意してプレイヤーに入れました。

撮影監督をした星野隆行は、リサイタル直後から落胆し切っていました。それはちょっとした手違いにより、ハイビジョン撮影のはずが、画像クオリティの低いモードでの収録になってしまったから。

それでも、会場に足を運べなかった方々も楽しみに待っていますし、私自身貴重な資料として今後の糧にしたいので、編集の仕上がりを今か今かと待っていたのです。

リビングにある大画面テレビに映し出された映像は、確かにハイビジョンほど鮮明ではありませんが、アナログ放送よりはクリアに見えますし、色合いもいい感じ。これ以上鮮明だと皺や肌荒れが目立つだけですから、十分の仕上がりです。

オーディオシステムに接続して聞く音声は、まるで会場にいるかのよう。そのリアルな音に誘われて、あの日の記憶が鮮明に蘇ってきました。

リアルゆえに、私は一音ごとに打ちのめされていきます。もう少しマシな演奏をしていたつもりですが、今の私には耐えがたいクオリティにしか聞こえません。

録画を観ながら、私は自分自身を散々罵りました。まるで史上最悪のサッカーゲームを観るように。

そしてアンコールが終わる頃には、顔を真っ赤にして屈辱に耐えていました。他に誰もいないのに、自分に見られている自分が恥ずかしいというほどに、自己嫌悪です。しばらくはどっぷりと落ち込みました。

でも、それは長くは続きませんでした。解決すべきことはよくわかった。自分に欠けているものや、「いざ本番」という時におろそかになるものが、鮮明に見えた。ならば、今からそれを一歩ずつクリアしよう。

気がつけば夢中で楽器に向かっていました。今年初めて触れる鍵盤です。以前にも宣言したように、勘が鈍ったりなどしていません。むしろ冴えていますし、指の動きもかつてないほどに滑らかです。

リサイタル時の私は、完全にプレッシャーに負けていました。どんな状況下でも、どんなに気持ちを揺さぶられ不安な時であっても、乱れのない演奏をするには、もっと強い精神が必要です。

それは単に稽古を重ねるだけでは身につきません。自分の愚かさに気付くこと、恥を知ること、そしてその上で自信を兼ね備えること。今年もまだまだ修行が続きそうです。