今回ご紹介するイベントは、いつものコンサートとはかなり趣が異なります。
エレクトーンのために新しく作られた作品を公募し、その中から選りすぐりの作品を本選というかたちで発表する舞台なのですが、それらの作品は作曲者自身ではなく、あえて別の演奏家によって演奏されるというスタイルを取っています。
今回は6作品が本選に選ばれ、その中の1曲を私が演奏することになりました。
その楽譜が先日送られてきました。作曲者とは面識はなく、作品を解釈する上でのヒントは、その楽譜がすべてです。参考音源が添えられていましたが、聞けば先入観を持つことになりますので、私はそれを聞くつもりはありません。
新しい作品が世に出る瞬間に立ち会うというのは、船の処女航海における舵取りを任される気分です。本来、作品にはゆるぎない価値が秘められているものですが、解釈や演奏次第で、その印象は大きく変わってしまいますので、責任は重大です。
作曲者の意図を的確に読み取りながら、私のイマジネーションを注ぎ込むことで、作品に新しい命を吹き込みたいと思っていますが、果たしてどのような仕上がりになるのでしょうか。
エレクトーンの世界では、これまでにも数多くの新作が生み出されていますが、そのほとんどは「自作自演」という形で表現され、その作品が独り立ちして世に広まるというケースは極めて少ないのが現状です。
ある楽器のために作曲するには、その楽器に関する深い知識が必要ですが、作曲家の中でエレクトーンの知識がある人はほとんどいません。
私も、作曲家の先生方が、もっとエレクトーンに興味を持って、エレクトーンのための優れた作品をたくさん書いてくれたらと常々思っていますが、なかなかそうした動きを実感するには至りません。
その中で今回の作品公募はとても有意義だと思いますし、新しい作品を演奏する機会に恵まれたことは大きな喜びです。
エレクトーンが、作曲家にとっても魅力あふれる楽器として認めてもらえるよう、その第一歩として、精一杯よい演奏を目指したいと思います。
本選はどなたでもご入場いただけますので、どうぞお気軽にご来場下さい。
第5回 電子オルガンの為の作品公募 本選
日時:2011年2月11日(金) 14:00開始
会場:YAMAHAエレクトーンシティ渋谷 メインスタジオ
入場無料
主催:日本電子楽器教育研究会