金亜軍さんの揚琴コンサートに行ってきました

開館50周年を迎える東京文化会館。このクラシックの殿堂で、揚琴プレイヤーの金亜軍さんのコンサートが開催されました。

午後1時半から開演のコンサート。会場に到着したのはスタートギリギリの時間でした。ホワイエも場内も多くの人々で賑わっていました。

コンサートは時間通りに始まりました。周囲を見渡すと満席。中国の伝統楽器への注目は、女子十二楽坊ブーム以来、高まっているとはいえ、揚琴のコンサートがこれほどの混雑するのは珍しいことです。それだけ金さんの演奏に期待する人々が多いということでしょう。

ステージの中央には揚琴、そして下手にピアノ、上手にウッドベース。舞台後方にはドラムスも設置されており、後ほど加わるようです。

金さんをはじめ、3人のプレイヤーが登場すると、場内は急に静まり返ります。穏やかに始まった曲は、金さんのオリジナル。夢の中を漂うような雰囲気から、徐々に激しさを増していく音楽に、観客はひきつけられます。

1曲目が終わって、私の胸中は衝撃に包まれたままでした。揚琴がこれほどまでに「歌える楽器」だとは思っていなかったのです。さらに、男性ならではのダイナミックな演奏は、「か細い音色」という揚琴のイメージを払い去りました。

金さんの挨拶があって2曲目。よく知られたシンプルなメロディー「彩雲追月」を、ジャズピアスト青木弘武さんの瀟洒なアレンジで、ロマンチックに聞かせてくれました。この時、金さんの表現力はサクソフォンやヴァイオリンにも匹敵する奥深さでした。

アナウンサーの村上信夫さんのサポートが加わって、金さんのトークはますます冴えていき、集中力を求められる曲の合間には、ホッと一息つく時間が設けられます。

圧巻は「荒城の月」を揚琴ソロ用に金さん自身がアレンジした演奏。この人、本当に中国人なのか、と疑いたくなるほど、日本的な抒情に満ちていました。

舞台は雰囲気が一転。伝説の名ドラマー、猪俣猛さんが加わり、4人でのアンサンブルになりました。ラテンや映画音楽など、心がうきうきする曲が続き、本物の風格とはこういうものかと納得させられる演奏です。

猪俣さんは今日が誕生日だそうで、出演者から思いがけないサプライズがあった時に見せた、はにかんだ笑顔が印象的でした。

更にゲストが登場。ヴォーカルグループのサーカスの4人です。エレガントな雰囲気に変わったステージからは、なにか美しい花の香りが漂ってくるかのよう。絶妙なコーラスはいつ聞いても心地よく酔わせてくれます。

お馴染みのミスター・サマータイムはもちろん、蘇州夜曲、そして中国語での海は故郷をアンサンブルし、会場をしびれさせました。

アンコールには亡き父への思いを込めた新作「音魂」を披露。誰もが胸を打たれたことでしょう。

金さんの話で印象的だったのが、「二胡の伴奏で終わるのはイヤだ。俺はソロで行くと決心してから、長くて険しい道のりだったけれど、今こうしてしステージに立っていることに感謝している」という人生ストーリー。

私がエレクトーンに込めているものを、金さんは揚琴で実現しているんだということがよく理解できました。

金さんは来日20周年。私はあと2年で20周年。金さんはちょっぴり先輩です。立派なプログラムには、数多くの著名人からのメッセージに加え、揚琴の説明も掲載されており、揚琴の普及にも大きな思いがあるのがわかります。

終演までじっくり楽しんで時計を見たらタイムリミットを超えていました。今日は夕方の便で出掛けなければならなかったのですが、間に合いません。変更すればいいと思ったのですが、その後は満席。どうしようもないので、明日の早朝便で向かいます。

今も、金さんのパワーが私の体内を駆け巡っています。素晴らしかったです。私もいつか、東京文化会館でリサイタルを!