4/9のリハーサル

さくらがきれいないい季節になりましたが、私はというと、リサイタルが終わり、サイさんとの久しぶりの共演が終わり、すっかり抜け殻になっていました。素晴らしい体験の後に必ずやってくる、恐ろしい喪失感。ズタズタになって何も手につかない日が続き、どん底でした。

でも、時は待ってくれません。一向に上がらない効率や、枯渇したインスピレーションを嘆きながらも、次の準備へと駒を進めなければ。こうした壁を越えるのは、本当にたいへん。音楽や舞台に背を向けていいのかと自分に問えば、それは死んでもイヤ。だからやるしかありません。でも、ひとたび壁を破ることができれば、それまでとは違う自分に気づくことができます。

今度の日曜日はエレクトーンシティ渋谷で演奏会があり、歌手ふたりとフルートふたりのお相手を務めます。選りに選って手間のかかる作品ばかりで、何かの冗談かと思うような内容に取り組んでおり、今日はそのリハーサルがありました。

これらをひとりで準備している時、私は常に不機嫌でした。何しろエレクトーンはとにかくたいへんですから。前にも触れましたが、私の仕事は精巧な刺繍が施された手縫いのドレスを作るようなものです。それを特急仕上げで15着。実際、2週間前は物理的に不可能だと思っていました。死ぬ気で仕上げても、一度だけ袖を通せばクローゼット行きという事実も意欲を削ぎ、不可能がいよいよ現実味を帯びてきたのです。

でも、諦めることは私のメニューにはありません。ギリギリまでベストを尽くせば、どんな結果になっても説得力が出てくる。でも今諦めればただの笑い者。ひたすら音符と対話し、音楽を理解することに努めました。

いつの間にか、私は波をつかんでいました。いい歳して共演者の前で恥をかけないというプライドもあります。名うてのソリストの期待を超える仕事が私のスタンダード。その信念が道を開いてくれました。

リハーサルは素晴らしいものでした。ソリストの圧倒的な表現力に触れ、地獄の苦しみが、一瞬にして天上の歓びに変わったのです。これだから音楽は最高。ひとりでも多くのお客様に聞いてもらいたいと思います。ご期待ください。

渋谷のビルの谷間にもさくら
エレクトーンシティ