鉄板焼 但馬 at ポートピアホテル

アラン・シャペルでサプライズ連続のブランチを楽しんだその夜のディナーは、同じくポートピアホテル内にある鉄板焼の但馬で。しっかりした食事が続いて胃袋は大丈夫なのか、そもそも食欲は保てるのかと心配されるかもしれませんが、目の前にご馳走が並ぶ幸せに、気分も胃袋も元気いっぱいです。

そして友人との会話、スタッフたちとの会話を楽しみながら、ゆっくりとしたペースで味わうことが、たくさんを美味しく食べる秘訣です。

店内はレンガ色を基調とした落ち着いた雰囲気。壁向きや窓向きにカウンターを設ける店が多い中、ここは中央の鉄板を囲むようにして、ぐるりと席を配置したコーナーもあり、そこなら店内を見渡しながら鉄板に向かえます。

この日の献立は、友人が店の料理長に特別に仕立ててもらったもの。最低限のリクエストはしてあったようですが、友人自身もまた、何が出てくるのかをワクワクしながら待っています。

対面しながら腕を振るう担当の料理人も、いつもとは一味違う緊張感に包まれている様子。気分はまるで「カジノロワイヤル」です。さて、どんなゲームが展開するのでしょうか。

まずはルイロデレールクリスタル2002で乾杯。早速調理が始まり、何やら小さな鍋にハマグリと野菜が入り、鉄板上で加熱されていきます。貝が口を開いたところで、熱々が目の前に運ばれました。貝の持つ味わいそのものが引き立つスタートの一品です。

続いて前菜。これはとてもユニークでした。用意された素材はフカヒレと香川産のホワイトアスパラ。アスパラは鉄板で軽く焼き色を付け、切り分けます。

それをフカヒレとともにセロファンにようなものに入れ、コンソメスープを加えて口を結わきました。それででき上がりかと思いきや、なんとそのまま鉄板に載せて加熱します。

融けてしまわないのか心配でしたが、230度までの加熱に耐えられるのだとか。ぐつぐつと煮込にでから、皿に移して提供。包みを開くとコンソメの香りが一気に広がります。

試作ではとろみを付けたものも作ったそうですが、コンソメの風味を活かすにはさらさらの方がよいと感じたとのこと。スープにフカヒレとアスパラが浮かんでいます。

その先は、むしろオーセンティックな鉄板焼スタイルで勝負。まずは鉄板焼の花型・車エビ。見事な手さばきですでした。

続いて大きな大きな長崎産の黒鮑。これもシンプルなレモンバター仕上げで。大きな貝柱と肝が添えられました。一切の調味料なしで十分に海の味わいが伝わってきます。

お待ちかねのお肉は神戸牛のフィレとサーロイン。それぞれを少量ずつ食べ比べるという趣向です。

まずはフィレ。脂身が少ないとはいっても、神戸牛ですのでそれほど淡白ではありません。赤ちゃんの耳たぶのようにソフトでぷくぷくです。赤ちゃんの耳を食べたわけではありませんよ、念のため。

合い間には珍しい野菜の数々。とりわけ興味深かったのは、淡路島産の玉ねぎ。でも、こちらはまだ成熟していない若いもので、見た目はエシャロットのようでした。それでも、しっかり甘く、えぐさだけがない感じでした。

サーロインはフィレよりも更にやさしい口当たりで、とろける風味が口いっぱいに広がります。フィレもサーロインも一切タレは必要ありませんでした。ここでもシャトーマルゴーを合わせ、絶妙なコンビネーションが楽しめました。

最後に先ほどの車エビの頭と殻を煎餅にして。更にキノコピラフが付くとのことでしたが、今日はもうご飯ものは遠慮しておこうということで、ここでお食事終了。

デザートは、フルーツやアイスクリームに加え、アーモンド入りのキャラメルムース。濃く入れた煎茶がよく合いました。

スタッフたちは陽気で人懐っこく、とても世話好き。驚きのある前菜とは対照的な王道的な魚介と肉の調理。それぞれのパフォーマンスの中に、鉄板焼の面白さを改めて垣間見た気がします。