せっかく心地よい夢が見られそうなベッドに入れたというのに、隣室で中国人たちがハイテンションに盛り上がっていて、結局ほとんど眠れずに朝が来ました。
ゆっくりとバスタイムを取り、ホテル内のブラッセリーで朝食を。今はブッフェになりましたが、ファイブスターホテルならではの品揃えに加え、中国料理のアイテムも揃っています。
サービスはこまやかに行き届き、マネジャーが必ずテーブルに挨拶に来るところもさすが。帰り際には、「明日のコンサートのご成功をお祈りします」と声を掛けられました。
朝食後は雑誌のインタービュー取材がありました。エディターは若い男性でしたが、通り一遍の質問ではなく、音楽への深い造詣と愛情の中から、彼自身の思いと言葉で問い掛けてくれたのが嬉しかったです。
話を進めるうちに彼の視線から活力が溢れ出し、エレクトーンとその音楽に対し一層の関心を示してくれているのがよく伝わってきました。きっとよい記事を書いてくれることでしょう。
今日は、日本から私の仲間たちがやって来ました。岡山から浦東に到着する組と、羽田から虹橋に到着する組があり、それぞれにショーファーを迎えに出しました。
滞りなくピックアップが済み、ウォルドルフ・アストリアで無事に合流。私も昨日来たばかりなのに、もう先住民のような気分になって、日本からの客人を迎え入れました。
まずは、大みそかにも利用したことのあるホテル内のファインダイニングで、歓迎のランチ会をして、外灘周辺を散策しながら、上海の洗練と活気を味わってもらいました。
でも、今日の天気はいまひとつ。雨こそ降りませんでしたが、気温は低めです。風が吹くと震えてしまいます。
そうこうしているうちに移動の時間。ウォルドルフ・アストリアを名残惜しく後にして、ヒルトン上海に向かいました。チェックインを済ませ、部屋から見渡す風景は霞みがかっていますが、新旧が入り混じった景観は上海そのものです。
部屋で落ち着く間もなく、明日のコンサートに備えたリハーサルに出発。会場となる上海音楽庁は、もともと映画館だったそうですが、今は上海を代表するクラシック音楽ホールとして愛されています。
ホール周辺は公園になっていて、広い土地に木々や花々が植えられています。満開の桜が、ここ上海にも咲いていました。
ホールの建物は重厚感があって立派です。そこに向かうアプローチに立つだけで、とてもワクワクします。ああ、明日はここで私の演奏会なんだと、しみじみ思い耽りました。
ホール内もまたオペラハウスを思わせる荘厳な造りになっています。舞台に置かれたSTAGEAは、異質なほどに現代的ですが、次第にまるでアコースティック楽器であるかのように見えて来ました。
音響はこれまで上海公演でいつもタッグを組んできた「音空」さんのスタッフたち。安心感が違います。私の音楽をあちこちで聞きなれた仲間たちも、いい音だと満足してくれました。
そして、今回ありがたかったのは、私の門下、入谷麻友も来ているので、麻友に弾かせて、私が客席で音を吟味できたことです。
と同時に、この美しいホールに響き渡るエレクトーンの音色を聞き、それを演奏する門下生の姿を見ながら、なんと素晴らしいシーンだろうと、胸が熱くなる思いでした。
私が育てた者たちが、近い将来、この舞台で自分の名を冠した演奏会を持てるよう、精一杯支えていくことを決意しました。
それにはまず、明日の演奏会を私が一歩先に成功させなければなりません。リハーサルは音響のチェックのみで、十分にはできませんでしたが、きっとよい演奏ができるでしょう。
明日は午前8時過ぎから最終リハーサル。そして午前10時半に開演。コンサートの模様はFMラジオで生放送されます。エレクトーンにとって、そして私自身にとって、また新しい扉が開かれます。