八重山での休日を終え、濃霧の那覇を経由して東京に戻り、気温が10度も低い都会に埋もれてもなお、気分だけは島の幻の中に漂っています。
都心も新緑の季節とはいっても、あのまぶしいグリーンに比べたら、まるで古い茶葉のよう。
雲さえ寄せ付けない空の青さが、今も目に焼き付いています。
今はデスクのトレーに置かれた貝殻も、昨日は砂浜にありました。
なんだか、とっても不幸なことをしてしまったような気がします。今からこれを浜に戻しに行くとすれば、もう一度旅立つ口実になるでしょうか。
そんなことを思いながら、自分のために買い求めた沖縄の菓子を広げました。
ひとつめは、パッケージはトロピカルでも中身は堅実なバナナケーキ。
ヒルトンで売っているバナナブレッドを、もっとお菓子っぽくした味でした。
そして沖縄といえば、たいへん有名なこのお菓子、ちんすこう。
人気伝統菓子だけあって、いろいろなメーカーが製造販売していますが、私は新垣のしか食べません。好みもあるかと思いますが、私にとってはこれこそがちんすこうの味です。
お菓子はとても甘かったけれど、人生としては苦い一日でした。ひとつの旅が終わり、同時にひとつの時代が終わる。そして、今は次の旅へと歩み出す気力を探しています。
海に漕ぎだすには風を読まなければ。意識や思惑とは無関係に変わる風に命を託すわけですから、読み違いは許されません。