和田龍 新酒を味わう会

信州上田に来ています。素晴らしい青空に、澄み渡る空気。清々しいとはこういうことをさすのだと実感しました。気の向くままに城下町をそぞろ歩きといきたいところですが、今回のメインイベントは新酒を味わう会です。

和田龍酒造の新酒を味わう会は、今年で25回目を迎えるとのこと。そんな長い歴史のある会に、私は4年前から参加しています。

そして今回は新酒を賞味する前に、私の演奏をお集まりの皆さんにお聞きいただく時間を設けて下さいました。

だから好意的なのだと誤解しないでください。和田龍の酒に魅力を感じるからこそ、ふだんは決してお受けしない酒の席での演奏を引き受けたのです。

根っからのワイン党だった私に、日本酒の魅力を教えてくれたのが和田龍の酒でした。最初は「思ったよりも口当たりがよく、美味しい」というくらいの感想しかありませんでした。

それが、2年目には違いや個性が感じられるようになり、3年目にはその味をいつでも思い浮かべられるようになり、4年目には進んで欲するようになりました。

酒宴に先だって演奏したのは5曲。皆さんの心に音楽がこだまし、私は酒に酔う前に、すっかりこの心地よさに酔いしれながら、思い切り演奏することができました。

いよいよ新酒がテーブルに運ばれてきました。今年も5品種が並び、それぞれに味わいを比較します。同じ種類でも、グラスが違うだけでも口当たりが変わることなど、たいへん興味深く味わいました。

そして酒の味を引き立てる料理もあれこれと振舞われました。私は食べるか飲むかどちらかに集中したいので、今日は飲むことに専念して、料理はほんのつまみ程度に。

5種類飲み比べてみて、やはり私は大吟醸が好きです。気品、芳醇、余韻、さまざまなキーワードが浮かんできますが、驚いたのは甘い杏仁豆腐を食べた後に口にした大吟醸が、杏仁豆腐にさえ惑わされない確かさにでした。

おそらく、今日飲んだ酒は、一日の量としては間違いなく過去最高です。ちょっと心臓がバクバクしましたが、本当に気持ちよかった。そして集まった皆さんとの会話もとても楽しかったです。

おひらきの後は、近くのダイニングバー「柴崎」でスイーツ&パスタ二次会。

シックな店内ではジャズギターのライブ演奏が行われていて、一日の慌しさをすべて流してくれるようなやわらかいムードが漂っています。

こんな空間ですから、スコッチやブランデーが似合いそうですけれど、日本酒の余韻を壊したくないので、アルコールは控えました。その代わりに、フルーツパフェ!

パワフルプレイの後のスイーツは最高です。更に他の方が注文した「たらこレモンパスタ」を一口分けてもらいましたが、そちらも爽やかで美味でした。

酩酊ついでにピアノを弾いたりして。さきほどホテルに戻ったところです。

音楽と日本酒。まったく違うようでいて、実に共通点が多いことに気付きました。造り手の心がこわいほど表に出てしまうこと。リスクを恐れず果敢に挑むことで向上していくこと。そしてたしなみ続けることで味わいが深まっていくこと。

一滴と一音を照らし合わせながら、さまざまなことを心で感じるひとときでした。