シンガポールでは最新スポットが脚光を浴びる中、昔から変わらぬ表情を見せてくれるものや、消えゆく場所がたくさん潜んでいます。週末は、そんな風景を求めて歩いてみました。
まず向かったのは、マレー鉄道のタンジョンパガー駅。開業して79年の歴史を持つ立派な駅舎ですが、今月末でこの駅に列車は来なくなってしまいます。
以前は、イースタン・オリエンタル・エキスプレスも発着していた夢の終着駅でしたが、今はローカル列車しか来ません。それでも、堂々たる駅舎や異国情緒あふれる雰囲気は国際ターミナルらしさに溢れ、旅情をそそります。
ここからマレーシアのクアラルンプールまで約400キロ。今回を逃したら、もう二度とここから列車には乗れないのだと思うと、急に旅立ちたくなりました。
チケットブースには長蛇の列。でも、本日分のチケットは売り切れとの表示が出ています。残念・・・
せめて駅内をゆっくり見物して記憶にとどめたいもの。ホームにも行ってみましたが、そこに列車の姿はありませんでした。
それでも、記念に訪れる人が後を絶たず、バーゲンで賑わうオーチャード通りにも負けない人出と活気です。オリエンタルスパイスのにおいに包まれ、列車に乗らずしてすでに旅人気分。脇の食堂も大変な賑わいです。
この活気もあとわずか。店の人たちは、きっと祭の後のわびしさを噛みしめることになるでしょう。次の仕事は決まっているのかなって、ちょっと心配になりました。
シンガポールといえば、アフタヌーンティやハイティが文化として根付いている都市でもあります。歩き疲れた足を休めるために、風情のあるダクストンロード沿いに建つ、ベルジャヤホテルのカフェを訪れました。
カフェの名は「Cafe L’Operetta」。先日ディナーに訪れたボートキーにあるイタリア料理店の姉妹店です。ボートキーの方は透明感のあるモダンなデザインですが、こちらはホテルのイメージに合わせてクラシカルな内装です。
店内ではちょうどクッキングクラスが開講中だったので、ロビーに面したソファに座りました。
3段重ねのトレーに載ったカナッペや菓子類は、すべてこの店で作っているオリジナルの品々。日本人パティシェの丁寧な仕上げが見事です。ティーもたくさんの種類から選べます。
ショーケースにはピースケーキやマカロンが並んでいて、土産に購入することもできます。ホテル名の付いたシグネチャーケーキや、裏メニューのチョコレートクープも美味。大きなホテルにはないゆとりが心地よい店でした。
早めの夕食はホーカーズに挑戦。いわゆる屋台村のようなもので、ローカルフードが手ごろなプライスで楽しめる人気スポット。今回は金融街の一角にある「Lau Pa Sat」というホーカーズに行きました。
大きな八角形をした建物にドアや窓はなく、オープンスペースという感じ。いくつもの屋台店が並び、無数のテーブルとイスがひしめいています。
シンガポールの友人が勧めてくれた店で、勧められるがままの料理を注文。サイズによって値段が違いますが、スモールサイズの炒飯なら250円程度。でき上がったら、テーブルまで持って来てくれます。
ドリンクやデザートもそれぞれ専用の店で購入します。沖縄を思い出すルートビアを買いました。氷入りのプラスチックカップを付けてくれます。
食器は使い捨てのようなプラスチック製。テーブルや皿を自分で拭いてから使う方がいいらしく、友人がティシューペーパーをたくさん持参してくれて助かりました。
料理は豪快です。飾り気はありませんが、味はなかなかのもの。店によっては古い油で胸やけする場合もあるそうですが、今回の店はそのような心配もありませんでした。
すべての店のすべての料理を味わったことのある人って、いるのでしょうか。そんなことを考えたくなるほど、スケール感と活気のあるホーカーズでした。