張家界国際音楽ウィーク2日目は初日にも増して交流ムード満開。朝から、互いに自己紹介をしたり、記念写真を撮り合ったり、盛り上がりっぱなし。言葉もなかなか通じませんが、私たちは音楽で結ばれています。
記念撮影人気ナンバーワンはやっぱり南アフリカ共和国の皆さん。見事な毛皮のコスチュームに目を奪われますが、さりげなく身に着けたアクセサリーの細やかな作りにもハッとしました。2日目からは6つのグループに分かれて、張家界の有名観光地に設けられた屋外ステージを巡回公演します。私は楽器が大きいので、残念ながら、6つの会場のうち3か所にしか出演できません。
この日の午前中は、宝峰湖へ。出演者用のバスにエレクトーンも一緒に乗りこんで、私の担当者が命がけで楽器を守りながら移動します。
到着した会場を見て、あまりのダイナミックさに驚きました。両側には切り立った岩山が迫り、舞台は滝から流れる川の上に造られています。こんな壮大な場所で演奏できるなんて、夢のようです。
ふだんは民族舞踊のショーが行われている場所なので、客席も常設されています。小雨が降っていたので、お客さまたちは屋根のある後方座席に集まっていました。
私の出演順は2番目。リハーサルは当然ありません。9時開演なのに、準備が始まったのが9時過ぎですから。
それでも、ものの数分で設営が終わり、最初のチームが演奏をスタートしました。モニターもないのでかなり演奏しにくそうです。
続いて私の出番。司会者がコメントしている間に、サクッとセッティング。サウンドチェックもなく、そのまま演奏スタートです。まあ、どんな環境でも弾けるよう訓練してきましたので、不安はありません。
やはり自分の音はほとんど聞こえません。山々にこだましてくる幾重もの反響音のみ。でも、その山々と対話するような気持ちで弾いたら、本当に気持ちよかったです。
中国の報道カメラさんたちは、本番中に遠慮なく寄りで撮影します。音楽に合わせてカメラも動くので、なんだかカメラさんたちとアンサンブルしているような気分でした。
次のインドネシアチームが、急遽ステージアを弾いてみたい!と言うので、希望の音色を聞いてセッティングなどもサポート。クリアな音で気持ちよく弾けたそうです。
午後の会場は天子山。張家界きっての名勝地ですが、公演会場まではロープウェーと、さらに急な階段を上った先にあるということで断念。
私はホテルに戻り、ロビーに楽器を下ろしてもらって、ひとりで稽古に励むことにしました。隅の方でおとなしく小さな音で弾いていたのですが、どこからともなく人が集まりだして、いつしか即席ライブ会場に。
ホテルの皆さんまで仕事そっちのけで聞き入ってくれいるばかりか、どこかから楽譜を持って来て「これ弾いて」と頼まれたり。いろいろな国の皆さんがエレクトーンに興味を持ってくれるので、実際に触ってもらったり。
こちらはウズベキスタンの皆さん。学校巡回コンサートで子どもたちに楽器を紹介する時と同じ、本当にピュアな表情で楽器に向かってくれるのが嬉しいです。
食事はホテルの宴会場でブッフェを食べられるのですが、夕食の時間には、午後の即席ライブを聞けなかった人たちから「私も聞きたかった」という声をたくさんもらいました。
「夜も弾いて!」という要望にお応えして、20時から1時間のロビーコンサートが急遽決まりました。ロシアチームの皆さんが、チャイコフスキーとラフマニノフが聞きたいと言うので、それぞれのシンフォニーを。
本場ロシアの皆さんの心に私のロシア音楽は響くのでしょうか。ちょっと心配でしたが、演奏後からは「マエストロ」と呼んでくれるようになりました。
そしてロシアの歌手たちとアベマリアを一緒にアンサンブル。一瞬で垣根がなくなり、一緒になれたという感じです。
だれか弾いてみませんかと呼びかけると、ブラジルチームのキーボーディストが名乗り出ました。ロワーはベース、アッパーはエレピとパッドをリクエストされ、そのようにセット。
すぐさまベサメムーチョが始まりました。曲のテンポに合わせてリズムも加えてあげると、回りの歌手、パーカッション、ギターなども加わりだし、どんどん盛り上がっていきます。私もアドリブで加わったり、久しぶりにエキサイトしました。
こうしてエレクトーンを囲んでさまざまな国の人が音楽でひとつになっている。エレクトーンがキャンプファイヤーの炎のように感じられるひと時でした。