友人が企画してくれたコンサートに出演するため、シンガポールへ来ました。一足先に現地入りした人の情報だと、昼間はよい天気だったとか。空港混雑のため30分遅れでチャンギ空港に到着した時には、南国らしい激しいスコールと縦横に走る稲妻が歓迎してくれました。
早速、待機していた女性ショーファーのリムジンに乗りベルジャヤホテルへ。簡単に打ち合わせを済ませた後、夕食のためラッフルズホテルへ向かいました。初日の夜は私が子どもの頃から音楽を習って来た先生ご夫妻と、私の家族らとともに、プライベートな食事会です。
ホストの私がシンガポールらしさを満喫してもらうために選んだのは、ラッフルズグリル。
雨の夜は渋滞が激しく、予約時間に10分遅れて到着。店先に向かうと、レセプショニストが我々の顔を見ただけで名前を呼びました。遅れてくる日本人グループというだけで目立ちますからね。
でも、まるで常連を迎えるような雰囲気が作られ、まんざらでもありませんでした。
恭しくテーブルに案内され腰を落ち着けると、すぐにおしゃべりに花が咲きましたが、その様子を察してか、スタッフはすぐに近寄ろうとはせず、適度な距離を保ちながら頃合いを見計らっているのがわかります。
お客たちが醸し出す心地よいムードもなかなか。高い天井にはたくさんのシャンデリアが下がっています。
一段落着いたところで、女性ソムリエが絶妙なタイミングで食前酒を勧めに来ました。
先生ご夫妻は大のビール党。ご夫妻に代わってビールを注文すると、本気でシャンパンじゃなくてビールなのか?と2度も念を押されましたが、そこに嫌味を感じることはなく、むしろ、もったいないというニュアンスでした。というのは、ビールが高いので、シャンパンの方がお買い得なのです。
注文はアラカルトで。デギュスタシオンのコースも魅力的でしたが、量的に食べきれないだろうということで、前菜、メインの2皿にしました。注文はそれぞれが好みで選んだので、面白いようにバラバラです。
アミューズはギリシャ風サラダ。ほんの一口ですが、さっぱりとした味わいに気分もリフレッシュ。パンは4種類で、どれもいい味です。バターは無塩、有塩の両方が用意されます。
前菜はフォアグラを選びました。濃厚なフォアグラに岩塩がよく合います。アーティチョークやカブのサラダも美味。
メインは舌平目を。半尾でいいと言ったのですが、そんなに大きくないから一尾の方がいいと勧められ、そのように。調理法も選べ、レモン、バター、ガーリックでのムニエルで頼みました。
仕上げは目の前で行われます。見事な手さばきで骨を抜き、元通りの状態で皿に。マッシュポテトとジロール茸が添えられます。香ばしく焼き上がった舌平目は素晴らしい味。一尾にして正解でした。
でも、満腹でデザートはパス。紅茶とプティフールで余韻を楽しみました。プティフールもそれぞれが個性的な味わいで、特に南国のスパイスを使ったものはエキゾチックです。
ちなみに、紅茶はコーヒーの倍額だったり、飲みものの価格が日本の感覚とはかなり違います。
スタッフはたいへん洗練されており、終始心地よいサービスでした。高級店ながら気取った感じはなく、むしろお客たちはとてもリラックスしています。このゆとりこそが、ラッフルズホテルらしさなのかもしれません。