神田将コンサート シンガポールの夕べ

いよいよシンガポール演奏会の夜がやってきました。ノスタルジックな面影を残すシンガポール川沿いのボートキーに位置するミュージッククラブオペラは、音楽とともにスペシャルな夜を過ごすためのニュースポットとして注目を浴びており、そこにエレクトーンの音がどう響くのかが楽しみです。

オーナーたちとランチをしながらの打ち合わせを済ませ、早速会場内へ。多くの人で賑わうボートキーの道から、細い階段を上り小さな扉を入ると、そこは別世界でした。

バーガンディレッドやゴールドを基調にした芳醇な色彩感。オーナーのコレクションだという数々のアートワークに彩られた空間は、まさに音楽のためのサロンです。

夕方には楽器が搬入され、このステージに初めてエレクトーンが設置されました。早速、音響機材に接続して弾いてみましょう。シンガポールで初めて奏でたのは、チャイコフスキーのシンフォニーでした。

ステージサイドでは、オーナー自らが自慢の音響機材を操作して、ベストな音環境を仕上げています。スピーカーは小さなものですが、クラシック音楽用に開発されたというサブウーハーが加わると、臨場感が一気に増しました。

場内は縦に細長い構造ですが、天井が高く、音がいい感じに広がっていきます。後部の席にも重量感のある低音が届き、ここならスケールの大きな曲も気持ちよく弾けそうです。

さて、まだ今日のプログラムは決まっていません。リハーサルをしながら、ふさわしい曲を選んでいきます。オーナーも大のクラシックファン。一緒に相談しながら、演奏曲を決めました。

コンサートは夜9時スタート。ふだんならもう終演している時間です。ドアオープンが10分前。でも、南国ですからオンタイムにはことが進みません。

遅れること20分ほどでいよいよ開演。まずはシュトラウスの美しく青きドナウからスタート。これは、いつもオーナーが自身のテーマ曲として使っているのだとか。演奏している場所からも、窓越しにシンガポールの景色が見え、異国情緒を感じたり、お客様の反応を確かめながら演奏しました。

お客様は本当に聞き上手。音楽がスーッと伝わっていくのがわかり、弾いていて何とも心地よく、上海のお客様とよく似た反応です。1曲弾き終えるごとの反応がはっきりしているので、私の方もどんどん乗せられて、相乗効果が広がっていくようでした。

途中、休憩があり、ワインやスコッチ、カクテルなど、思い思いのドリンクを片手に、見知らぬ人同士も楽しそうに歓談していました。まさにサロンという感じです。

後半にも大きな曲が並び、さながら大ホールでのコンサートのよう。アンコール2曲も含め、たっぷり2時間の演奏。終演はもう日付が変わる直前でした。

それから私も歓談に輪に加わり、シンガポールに新しい友人がたくさんできました。そして、エレクトーンがいかに魅力的な楽器であるかを、私も客観的に再確認できました。演奏中の写真はまた改めて掲載します。

終演後は、私のリクエストに応じてサラダを用意してくれました。ブラータチーズ、甘い甘いハニーコーンなど、大好きな食材がたっぷり。心地よい演奏の後には、味しさがひときわアップします。

さあ、8日はディナー付きのサロンコンサート。こちらもエレガントなひと時をお届しようと思います。ご期待下さい。