神田将エレクトーンコンサート in 姫路

文化堂65周年を記念したエレクトーンコンサートは、若いスタッフが中心となって、それぞれに熱意を持って準備に取り組んでくれたおかげで、無事盛会に終えることができました。

姫路でのコンサートは私にとって初めてのこと。姫路駅に降りるのも、子どもの頃に親に内緒で密かに姫路城を見に来た時以来ですから、もう35年ぶりくらいになります。

残念ながら、姫路城は現在改修工事中のため、大きな囲いに完全に覆われ、ぼんやりとしたシルエットしか見られず。駅周辺の様子もだいぶ様変わりしたように感じました。

まずは会場入り。ちょうど楽器が搬入されたところだったので、位置決めとセッティング。ホール客席は比較的横に広がっている造りの上に、厚手のカーペット敷きなので、スピーカーの位置に気を遣います。

収容人数の割には舞台が広く、間口も奥行きも十分にあります。ステージだけ見れば、浜離宮よりも広いかも。

位置が決まったところで、照明さんがシュートに入るとのことで、2時間ばかりフリーの時間ができました。そこで、文化堂さんのお店を訪ねることに。

駅前から続くアーケード、もしくは姫路城に向けてまっすぐのびている広い道を歩くこと約10分。いろいろなお店が並ぶアーケードの一角に、文化堂さんもあります。

1階がショップで、2階、3階に教室があり、その上には小さなホールもあるとか。やはり楽器があると稽古したくなってしまい、空いている教室をお借りしてしばらく弾きました。

帰りにショップで楽譜を買って、「上、見て下さい」と指された方を見上げると、なんと万国旗のように連なるコンサートフライヤーが天井でアーチを描いているではありませんか。

ここまでしてPRに勤しんでくれているとは、本当に嬉しいです。コンサートではよい演奏でお返ししなくては。

ホールに戻って、ランスルーのリハーサル。ほとんど間を入れず、本日の演奏予定曲をすべて弾きました。

初めての会場、かつほとんど響かない空間ですので、それを弾き方で調節して、できるだけ自然に聞こえるようにしなければなりません。しかも、予想のつかない響き方をするので、全曲をきちんと弾いてみる必要がありました。

あまり消耗したくなかったのですが、ある程度、本気の弾き方をしなければ、響き具合の確認にはなりません。今日は体力勝負です。

それに加え、悩み事が。今日のお客様の層を聞いたところ、子どもが多いとのこと。ところが、予定のプログラムは通好みのリサイタルラインナップです。少なくとも、楽しいコンサートという感じではありません。

子どもとはいえ、音楽のたしなみのある子ばかりですが、それでも、高度な集中力が求められる作品ばかり並んでいては、ちょっと気の毒な気もします。

かといって、娯楽性の高いプログラムに変更するのも、せっかくリサイタル級の演奏を期待して来て下さる方を裏切ることになります。

開場して、客席から聞こえてくる子どもたちの無邪気な声に、悩みは一層深まるばかり。開演ギリギリまで差し替えを検討しましたが、やはりここは予定通りにやると決心しました。

全体に落ち着いたトーンで進んでいくコンサート。最前列には子どもばかりが並んでいましたが、リラックスしながら楽しんでいるようです。

面白い現象が起こったのは、後半2曲目。松本淳一さんの「種族B」を東京のリサイタルに続き、2度目のお披露目をした時のこと。ユニークな体の使い方や、好奇心をくすぐる音色に触発されたのか、場内には子どもの笑い声が飛び交い始めました。

笑い声と言っても決して不快な感じではなく、音楽によって思わず心が弾んだというところだと思います。まるでその笑い声までが、松本さんが仕込んだある種の効果音のようにも聞こえました。

終曲まで弾き、ほとんど体力が残っていないことにちょっとショック。そして昨日まで第九三昧で稽古していたことで、悲愴の心になかなか戻れなくなっていたことも反省です。やはり、第九の稽古は今日を終えてからにすべきでした。

終演後は子どもたちともたくさん握手しました。強引なプログラムで弾いたにもかかわらず、こんなにまで慕ってくれて感激。またみんなに会えるといいなと思います。