玖珠の子どもたちからのメッセージ

昨晩のメルサンホールコンサートでの余韻とともに、1日3公演の心地よい疲労感の中で迎えた朝。1週間の滞在となった玖珠町ともいよいよお別れです。

飛行機で東京に戻るため一足先に出発した波多江さんを見送ってから、私はホールの担当者に豊後森駅まで送ってもらいました。

古いプレートと背景とが、「郷愁」を合言葉に見事な調和を見せる小さな駅。付近にはコンビニエンスストアどころか、食品を売る店はひとつも見当たりません。ちょっとお腹がすいたのですが、博多駅までは我慢するしかなさそうです。

広い空を仰ぐプラットホームに行くと、遠くからガタンゴトンと列車の音が聞こえて来ます。まだ列車の到着まで7分もあるというのに。それほど周囲は静かなのです。

ホーム自体が低いので、古いレールも間近に見えます。レール脇に顔を出す小さな草の間を、これまた小さな蝶が舞っていました。

そうかと思えば、スズメバチの群が上空を飛び交って、ホームで待つ数少ない客たちを怯えさせていたり。静寂の中にもドラマがたくさんあります。

列車に乗り込んだら、空腹に耐えきれず、土産にもらった柏餅と金つばを早速開封。作り立ての美味しさに、あっという間に食べきってしまいました。

あとは車窓をぼんやりと眺めながら、玖珠の1週間を振り返り、出会った人々の顔を思い出してみることに。美しい風景にもたくさん遭遇しました。

雄大な風景には止まることのない時間の流れを感じたり、さりげない野の花にはまるで時間が止まっているかのような感覚になったり。玖珠はやっぱりメルヘンの町です。

そうだ、子どもたちからの感想文を預かっていたっけ。すぐに一度目を通しましたが、改めて読んでみたくなりました。

小学生低学年はあどけないメッセージとともに挿絵を書いてくれました。エレクトーンや私の特徴をよくつかんでいます。楽器の周りに音符が飛び交っているものや、たくさんの動物に囲まれているものもありました。

きっと子どもたちにとってのエレクトーンは、ビックリ箱のようなものなのでしょうね。

午後には新山口に到着。迎えの車に乗り、第九のリハーサル会場へと急ぎます。

いよいよ本番を明日に控え、今日は最終のリハーサルです。発声練習の後、第九以外の披露曲を稽古し、続いて第九の合わせです。ソリストも揃い、厳かな緊張の中、本番さながらの熱演となりました。

一通りの合わせで今日のリハーサルは解散。その後は私個人の稽古のために、居残りするつもりでしたが、事情によりできなくなってしまいました。

玖珠町でも毎日欠かさず第九は弾いてきましたが、何度弾いても満足の域には達しません。1分でも1秒でも長く楽器に向かい、最後の瞬間まで無駄にせず練っていきたいところなので、これきり次が本番というのは痛手です。

でも、これで不安を募らせたら負け。あとは覚悟を決めて、せめてイメージトレーニングに励むことにします。