1989年以来、毎年草加市で開催されている国際ハープフェスティバル。質の高いコンクールと、ハープを中心にした誰もが楽しめるコンサートを主軸に、約1ヵ月間にさまざまなイベントが行われました。その最後を飾るのが、ファイナルコンサートです。
会場は草加市文化会館。すぐ近くには綾瀬川が流れ、その岸辺には1683年に植えられたという松並木が連なっており、草加松原として有名です。整備された遊歩道を歩くには、絶好の天気でした。
会館の1階には草加の伝統産業展示室があり、日によっては煎餅焼き体験もできるのだとか。
この日、体験はできませんでしたが、併設されたショップでたくさんの草加煎餅を買い込んで来ました。いろいろな店の品を選んだので、食べ比べるのが楽しみです。でも遊んでばかりはいられません。大事な演奏が控えているのですから。
ファイナルコンサートでは、コンクールの表彰式、優勝者による演奏、ハープ独奏、ハープアンサンブル、そしてエレクトーン演奏と、多彩なプログラムが組まれています。
午前中から進行の確認を含めたリハーサルが行われるため、私も午前9時半に会場入り。今回は楽器のセッティングや音響をハープフェスティバルの舞台さんに任せたのですが、とてもセンスよくまとめてくれたので、何の心配もありませんでした。
順調に進んでいくリハーサルの中で、ハープの音色の美しさと奥深さに、改めて驚かされることが何度もありました。大ホールでも十分な音量で響きますし、繊細なピアニッシモから、ダイナミックなフォルティッシモまで、幅の広い表現力が感じられます。
中でも圧巻だったのが、ゲストとして招かれたフランス人ソリストノ、シャンタル・マチューさんの演奏。体全体を使って表現する音楽の心地よさは、言葉では言い表せません。
演奏を聞きながら感じたのは、まるで記憶の中を飛び回るようなときめき。ある瞬間には五月の雨に濡れる草の匂いが漂ったり、金色に輝く草原が広がったり。見たこともないはずの風景が、心の中に果てしなく広がっていくのです。
リハーサルだけでも、息が止まるほど心に響きましたが、本番はさらに素晴らしい演奏でした。
それに比べたら、私など存在感がなかったかもしれませんが、リハーサル時のマチューさんにも触発され、今日も気持ちよく演奏することができました。
今回は3曲だけのゲスト演奏にもかかわらず、私のコンサートにいつも来てくれる皆さんが、多数駆け付けてくれたことも嬉しく思いました。
一方、ロビーには何台ものレバーハープが展示され、自由に体験できるようになっています。さりげなくレクチャーもしてくれるので、ハープが初めてという人にも、構造や特色が理解できたのではないかと思います。
種ちゃんもハープ演奏にチャレンジ。ふたりとも気分だけはハーピストですが、構えだけで素人とわかってしまいますね。
優雅に軽やかに弾いているように見えるハープ。でも、実はとても指に負担の掛かる奏法で弾いているのですね。タコや血豆は当たり前。フォルテのグリッサンドばかりを続ければ、摩擦で指が焼けてしまうでしょう。
意外にも力強くダイナミックな面も持ち合わせているハープ。いつか共演してみたい楽器のひとつです。