Bizet-Mussorgsky-Beethoven

感傷に浸っている場合ではないのに気分が上がらない時は、体を動かすのが一番です。いつもより長く、そしていつになく力強く泳いだら、全身が目覚めました。水の中に150分。炎天下の屋外だったので、手の甲まで真っ黒になったのはちょっとまずかったと思います。

来週には加古川の第九演奏会があります。エレクトーンとの共演の場合、第4楽章しか演奏しないので、第九の部は30分ほどで終わってしまいます。本当は全楽章弾きたいのですが、皆さんがお聞きになりたいのは主に第4楽章、そして公演の主体となる合唱団が登場するのは第4楽章のみということで、そこは割り切っています。

その代わり、第九の前にエレクトーンソロなどのコーナーを設け、長時間のシンフォニーに慣れていないお客様にも、飽きることなくお楽しみいただけるよう工夫しています。昨年の加古川第九では、前半にエレクトーンソロをお届けしました。初めてエレクトーンをお聞きになるお客様のために、堅苦しい雰囲気にならないよう、気楽に聞ける作品を選んだと記憶しています。

今年はさらに工夫を加え、4人のソリストに協力してもらい、カルメンの名アリアを4曲演奏することになりました。カルメンはドラマチックな筋書きとともに、迫力ある群衆シーンから息を呑む静けさまで、コントラスト豊かな構成が大人気のオペラです。その中から、それぞれのキャラクターを見事に表した珠玉のアリアと、超有名な前奏曲を選びました。

カルメンは、私にとって最も演奏機会の多いオペラなので、ひとりで全幕のオーケストラパートを受け持つことも可能ですが、まだひとりで完璧に再現するまでには至っていません。ビゼーの極めて完成度の高いオーケストレーションは、各楽器が非常に効果的に、しかも織物のように巧みに絡みあっていて、10本の指に集約するにはあまり複雑です。それを難解な数式を解くような感覚で、一歩ずつ完全な響きに近づけていく作業をするのですが、それはこの先何十年も続くでしょう。

今回はソリストの皆さんとの共演ということで、改めてこの素晴らしいアリアを見直し、今まで泣く泣く割愛していたところも、ほぼすべて組入れるところまでこぎつけました。あとは演奏から意識を切り離し、歌と自分が奏でるオーケストラパートとを溶け合わせるコンダクター役に徹することができるよう、努めていきます。

第1部の後半は大好きな展覧会の絵を演奏します。今年は仙台クラシックフェスティバルでも展覧会の絵を披露するので、一番あぶらののったところを聞いていただけると思います。

また、第九も韓国での演奏を機に、大幅にアップグレードしました。こちらもご期待ください。それでは加古川でお会いしましょう。

9/25 加古川第九演奏会の詳細はこちら

第1部の内容

歌劇「カルメン」より:ビゼー

第1幕への前奏曲
カルメンのアリア「ハバネラ~恋は野の鳥」/貝塚有香
ホセのアリア「花の歌~おまえの投げたこの花を」/土田景介
第4幕への前奏曲~アラゴネーズ
ミカエラのアリア「何を恐れることがありましょうか」/向井悠
エスカミーリョのアリア「闘牛士の歌~諸君らの乾杯を喜んで受けよう」/井上敏典

組曲「展覧会の絵」より:ムソルグスキー

プロムナード
小人(グノーム)
プロムナード
古城にて
鶏の足の上に建つ小屋-バーバ・ヤガー
キエフの大門