中国・広州で開催された今年のAPEKAミュージックキャンプ。中国各地から集まった約70名の受講者、中国のエレクトーン文化を支える重鎮たち、そして日本からは特別編成の豪華講師陣が加わり、音楽三昧の一週間を過ごしました。このような催しに参加することができ、たいへん光栄に思います。
このキャンプは、個人レッスンだけでなく、グループでの講座やアンサンブルレッスン、コンペティションや講師陣の演奏会など、充実したスケジュールが組まれており、一週間で非常に濃密な経験をすることができるのが魅力です。
初参加の私は、実のところいったい何をすればいいのか、役割もよくわからないまま飛行機に飛び乗ったのですが、逆にそれがすべての経験に新鮮さを与えてくれ、まるでアドベンチャーゲームに参加しているような楽しさでした。
今年はベテラン勢の仕事ぶりを観察しながら、インターン生のようにおとなしくしていればいいのかと思っていましたが、なんと私もベテラン勢同様にレッスンを受け持ち、コンペの審査員をし、さらに講師アンサンブルの一員にも加えていただいたのです。
個人レッスンで、赤塚博美先生、西山淑子先生、西岡奈津子先生、小熊達弥先生という最高の講師陣と肩を並べるなんて、夢にも思っていませんでしたので、それはもうダークホース気分でした。
会場は白雲山麓にある広大な国際会議場。敷地には花々が咲き、シンガポールの街並みを思い出す雰囲気です。前庭のスケール感も圧倒的。
受講生は全員中国の皆さん。私には英語から中国語への通訳が付き、レッスンは英語で行います。通訳もまたエレクトーンを演奏する優秀な学生なので、音楽的な言い回しも的確に訳してくれ、レッスンはおおいに捗りました。
レッスンの日程を終えると、次はコンペティション。クラシックとポピュラーに分かれ、熱演が次々と披露されます。拍手もなく緊迫した雰囲気の中で弾くのは、あまり気分のいいものではないでしょうけれど、皆さんとても立派でした。
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そして最終日は演奏会。受講者たちのアンサンブル、コンペ受賞者の演奏に続き、講師陣のソロ。私がトップバッターを務めました。続いて他の講師陣やゲスト「電磁カクテル」が次々と披露し、その驚くべき完成度とド迫力の演奏に、客席がどんどん熱を帯びてくるのが伝わってきます。まさにくぎ付けという感じでした。
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ソロが終わると、講師陣チームがオーケストラパートを務め、台湾のピアニストAi先生とのショパンのピアノ協奏曲。指揮はAi先生の旦那様でもある郭先生。本物の愛が通い合う美しい演奏に胸が熱くなります。
さらに、ソプラノの司馬麗子さんと西山淑子先生による演奏に心を和まされ、最後はまたアンサンブルでトスカの名アリアを演奏して幕となりました。終演後は受講生たちも一緒に交流食事会があり、互いにあちこちのテーブルを訪ね合って、友好を深めました。
中国では段取り通りに物事が進みません。妥協を嫌う日本人には、耐えがたいこともたくさん出てきます。それを皆で協力し合い、何とかひとつのレールに乗せることができました。スタッフたちも、毎日明け方まで細かい調整をしながら支えてくれたそうです。
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受講生たちもその担当の先生方も、常に真剣で熱心。それに応えるため、ふだん互いに接点のあまりない講師陣が必然的にひとつのチームとなり、理解や友情を深めることにつながりました。今回のチームは、私にとって、まさに戦友です。
また、自分は人を導くには向いていないと思いかけていたのを、やはり培ったものを誰かに伝えたいと考え直すきっかけにもなりました。友好、自信、未来への希望。広州で得たものの大きさは、はかり知れません。実りの多い広州でした。
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