椿の花咲く頃、椿のホテルで椿姫を。そのことば通り、よい季節に美しいディナーショーをお届けすることができました。いつまでも記憶に残る、記念すべき一夜です。
会場入りしたのは正午。ボールルームへ行くと、ちょうど楽器が配送されてきたところでした。早速セッティングを始め、まずはエレクトーンのサウンドチェックからスタート。
会場を横広に使うため、指向性の強いスピーカーで、会場全体に均一な音を届けるのは不可能なのですが、できるだけバランスよく聞こえる配置を模索します。
メインスピーカーが舞台上のモニターも兼ねているので、歌い手にとって心地よい音量音質も追及しなければなりません。セッティングにはずいぶんと気を使いました。
あっという間にランスルーリハーサル開始の時間。照明演出やナレーション、舞台転換などの手順も確認しながら進めていきます。私が最も意識していたのは、歌とのバランスです。
エレクトーンは舞台とは別の台に置かれているので、私が演奏している位置では、自分の音がよく聞こえません。どこか遠くから聞こえてくる感じです。その環境に慣れるには時間が掛かりますが、アコースティックなニュアンスを出すには、この配置がベストなのです。
ランスルーが終わると、会場の準備もラストスパート。ホワイエには豪華な花やコシノヒロコさんのデザイン画などが展示されました。
ボールルームに集まるお客様は約230名様。通常よりもゆったりとした配置で、じっくり音楽に浸っていただきます。
おひとり様用やおふたり様用の小テーブルも用意されています。これなら気兼ねなく過ごせそうですね。
いよいよお客様が集まり始め、定刻通りにドアオープン。ホワイエでは弦楽四重奏の優雅な生演奏があり、シャンパン片手にディナー前のひと時を。
今日の料理は椿姫に描かれた時代のレシピを基に当時の料理をよみがえらせたもの。私は身支度で会場を離れたため、料理を見ることができず残念でした。
食事に続いてショーが幕を開けました。照明が暗くるにつれ、場内の賑わいが収まり、お客様の意識は舞台に向かいます。ステージの両サイドに設けられたスクリーンに、椿のイメージ画像や出演者のプロフィールが映し出される中、前奏曲を演奏。会場は一気に物語の世界へ。
そして音楽が変わり歌い手が登場すると、会場には大きな拍手が沸き起こりました。
オペラのストーリーに沿って、ハイライトシーンを次々と演奏するのですが、合間にはわかりやすいナレーションが入るので、音楽のイマジネーションが一層膨らみます。
舞台袖から見たステージも、まさにドラマチックな世界。会場内にも椿の花がディスプレイされていました。
私も渾身の集中力で70分のハイライトを演奏し、気持ちよくフィナーレを迎えました。入れ込んで準備してきたので、終わってしまうのは寂しいものです。
最後に客席にいらしたコシノヒロコさんにもご登場いただきました。
コシノヒロコさんからは「エレクトーンってすごいのね、本当にオーケストラみたい」と、嬉しいコメント。「ええ、とても気持ちがいいですし、指揮者のような気分ですよ」と答えると、「わかるわ!」と相槌も打ってくれました。
他にも、エレクトーンに驚いたと声を掛けてくれた人が多く、ギリギリまで精一杯取り組んだ甲斐がありました。