飛行中のストレスと大陸でのストレス

予定通りに上海に到着したのも束の間、コンサートの準備は予想通りに紆余曲折のスタートを切りました。

その前に、今日のフライトの話。いつもの赤い飛行機で上海に移動中のこと。春休みと年度末が重なり旅行客とビジネス客で機内が満席だということ以外は、特に変わったことのない通常のフライトでした。

最近、この赤い飛行機の会社のサービスが、ちょっと気にかかっています。会社が傾いた時から、乗務員たちは一層腰が低くなり、やや過剰なほどに愛想を振りまくようになっています。

愛想がいいに越したことはありませんが、それはサービスの表面的な一部分でしかなく、肝心なことをきちんとしてくれないのでは困ります。

この日も飛行中のサービスにはムラがありました。前方座席の客にサービスが集中しがちで、後方ほど行き届かない傾向なのはいつものことですが、そのアンバランスがあまりに著しかったのです。

食事が済んでから15分。私と隣席の見知らぬ客のテーブルには、いつまでも空いた膳が載ったまま。ひとつ前の列まではデザートが振舞われた後、食後の飲み物も終えてくつろいでいます。

いよいよ隣席のテーブルが片付けられ、次はここかと思いきや係は素通り。その後も10分近く放置されましたが、その間、乗務員は何度となく脇を通り掛かっているのです。

何とか目を合わせて要望を読み取ってもらおうと努めましたが、一向に気が付きません。ということは、客席をまったく見ていないわけです。

座席ごとに出来不出来が生じないよう、乗務員に全体の状況を把握するスキルが必要なことは言うまでもありません。しかし、少なくとも今日のチームは、完全に思い付きで目の前の仕事から片付けているだけで、優先順位やバランスについての配慮は見受けられませんでした。

私はついにしびれを切らし、自分でギャレーまでトレーを持って行こうと席を立ったところで、やっと乗務員が気付きました。そしてそのままギャレーに行って、軽く苦情を言いました。

やがてパーサーが謝罪に来て、こう付け加えました。今日はフライトが短いためにサービス手順を一部変えたことで、一部の客席へのサービスが遅れたといい、客の目を見てサービスすることを心掛けると締めくくったのです。

私はサービスの遅れが不満だったのではなく、要領の悪い仕事ぶりが見るに堪えなかったのですし、乗務員と目を合わせたいのではなく、客席の状況を常時把握するよう意識して欲しいのですが、どうも真意は伝わらなかったようです。

常に限られた人数でサービスに当たっているのですから、どこかに過剰なサービスをすれば、どこかがおろそかになるのは当然のこと。そういったサービスは素人くさいとしか言えません。最近の赤い飛行機会社は、ちょっと素人っぽくなったような気がします。

さてさて、上海のことに話題を戻します。今日は午後3時から上海のヤマハで31日に向けたリハーサルがありました。

ツァオ・レイのバンドメンバーとは初顔合わせ。皆さん中国の方々ですから、とてもマイペース。一般的に日本人は、きちんと準備を整えてからリハーサルにのぞみます。

私はその典型。準備不足でアンサンブルされるとイラッときます。こんなんで本番大丈夫?と心配になりますが、これでも本番にはそこそこいい演奏をしてしまうのも大陸人の恐るべき才能です。私はコツコツ。わずかな休憩も無駄にせず、しっかりと弾き込みました。

いつものお教室と違った殺気に、生徒ちゃんも不思議そうにのぞき込んでまいます。かわいい。

リハーサル後は、明日と明後日に2公演ずつ決まっている、学童向けの音楽教育コンサートの打ち合わせ。えええええ???の連続ですよ、もう。そんなん知らんし、今さらムリだし、そんなん絶対したくないしのオンパレード。

彼等は「神田さんの気持ちはわかりますけど、こちらの状況も察して下さい」と繰り返すのですが、「そのことば、そっくりお返しします」という感じで長い時間並行線。

具体的には説明しにくいのですが、私がこれまで一度も譲らずに必死で守って来たものを、捨てなければ実現しないことを要求されたわけでして。仮にそれをやってのけるにしても、どれほどの決意が必要かを相手に理解させなくては。

とにもかくにも、初日からストレス満載でのスタートです。夕食は火鍋。あまりの辛さに死ぬかと思いました。火が出るのは口からじゃなく、目からです。注文したミネラルウォーターが待ちきれずに、生水を飲んでしまったほど。そのあと、料理写真を撮る手が震えてます。

外灘のホテルに戻ってひとりのくつろぎタイム。素晴らしい景色と寝心地のいいベッドが、とがったココロをやわらかくしてくれるでしょう。明日はみんなに親切にできますように。