今回の上海公演には日本からも多くの皆さんが駆け付けてくれましたが、日毎に帰国していき、4日には家族を空港に見送り、上海に残っているのはとうとう私ひとりになりました。
外灘のウォルドルフ・アストリアをチェックアウトし、6日のコンサートを主催する上海文化広場が提携している国営の錦江飯店に移動。さぞや見劣りするのでは思いきや、なかなかエレガントで居心地のいいホテルです。
滞在するホテル棟は、味わいのある古風なゴシック建築。他にも広大な敷地内に個性ある建物が点在し、上海が最も美しかった往時を思い浮かばせます。
中庭には眩しい芝。中央では噴水が心地よい音を立てています。外灘にもエレガンスが溢れていましたが、外灘との大きな違いは落ち着き。活気あふれる現代の上海と歴史を感じさせる重厚な建物のコントラストが印象的な外灘に対し、こちらは時間の流れさえ優しさに満ちています。
敷地の外に出てみると、プラタナスが並ぶ大きな通りがあります。錦江飯店の向かいはオークラ花園飯店。この茂名南路を行き交う車こそ近代的ですが、それを除けば老上海の風格たっぷりの風景です。
花園飯店の庭先には桜が咲いています。満開を過ぎ、そろそろ散りゆくところ。今年は東京の桜を見ることはできそうもないので、ここでしばらく立ち止まり、しみじみと眺めました。
しばらくぶりに過ごすひとりきりの時間。ちょっと間だけ、上海人になりきって気ままに街歩き。わずかに寂しさを感じながら。