初夏の清々しい陽気となった子どもの日。四国で初の神田将リサイタルにて気分よく演奏し、心地よい疲労感に酔いしれながら、まだ余韻に浸っているところです。
リサイタル会場は坂出市民ホール。このホールがある周辺は、建物の上に第二の土地を設けた「坂出人工土地」で全国に知られる、建築的名所です。
一見ふつうの商店街のようですが、しみじみ見るとなんともユニークで芸術的な構造。その一角にある市民ホールも、たいへん興味深いデザインです。
最初、このリサイタルの話が持ち上がった時、高松にある最新ホールが会場の候補になりましたが、私の弟子が住む坂出のホールを使い、まずは地元から音楽を広げて行ってはどうかと提案。
古いホールなので気に入ってもらえないのではと心配されましたが、私の都合や好みよりも、地域施設の利用を優先すべきだと考え、坂出市民ホールでの開催を選びました。
確かに最新のホールは、設備面では申し分のない造りです。一方、古いホールには、長年の間にステージで繰り広げられてきた音楽の魂がより色濃く宿っています。私はそうした空間での演奏が好きです。
単に古いとだけ聞いていたホールですが、当日、実際に会場を訪れ、たちまち気に入りました。
70年代の魅力あふれる建築美は、ベルリンやヘルシンキを思わせる雰囲気。ロビーのブラックレザーソファなどは、今やラグジュアリーホテルで人気のテイストそのものです。
古き良きデザインに囲まれたホールは、温かみのある木材が多用されており、今見るとむしろモダンで洒落ています。
2階席は1階席アリーナを囲むように配置されていて、ステージとの距離もほどよく造られています。舞台の広さは、エレクトーンソロにぴったり。
余談ですが、このホールの上にも「第二の土地」があり、集合住宅が「載って」いるんですよ。ホールの真上に住んでみたいものです。
照明や音響は、ホールのスタッフがたいへん丁寧に協力してくれました。急なリクエストにも進んで応えてくれるのが嬉しかったですし、サポートが気持ちいいと、演奏に向かうモチベーションも上がります。
そしてコンサート企画から実行までをやり抜いた皆さんも、最後の最後まで本当によく尽くしてくれました。弟子の家族やその友人たちが、一丸となって協力してくれたおかげで、私は演奏だけに専念することができたのです。
リサイタルは、休憩なしの音楽会形式で100分の内容。すべてのプログラムが気の抜けない大作ばかりでしたので、ありったけの神経を注いで演奏しました。
演奏会は、毎回が初めてであり、毎回が最後。常に新鮮な気持ちで、同じ時間は二度と繰り返せないという決心で弾きます。今回も素晴らしいお客様に恵まれ、最後まで集中力が途切れることがありませんでした。
終演後はお世話になった皆さんや、大阪、横浜、新潟など遠方から駆けつけてくれた方々と一緒にテーブルを囲んでの交歓会。大束川沿いにある素敵な蔵カフェ「こうらく」が会場でした。
エレクトーンのコンクールで大活躍しているスーパーキッズたちも集まってくれ、久しぶりに音楽の深い話ができたことも、私にとって楽しい思い出になりました。
子どもたちに会う度に、エレクトーンの豊かな未来につながる成果を残してやらなければと強く思います。そのためには、まだまだ情熱を絶やすわけにはいきませんね。