Musica di Yuki Kanda Symphony e Opera NAGOYA

7月最後の日曜日、名古屋の高級住宅街の一角にある瀟洒なリストランテで、イタリアンなランチと、ほぼイタリアンな音楽をお届けする演奏会が開催されました。

滞在中のホテルから会場となるリストランテまでは、タクシーだと約20分。ところが、住宅街にある店の場所をドライバーに説明するよりも、街並みを感じながら歩いた方が楽しいと思い、名古屋の地下鉄に乗ってみました。

最寄駅の瑞穂区役所前からは勘を頼りにウォーキング。スーツケースを転がしながら、蝉の大合唱が響く桜並木を進みます。一度地図を見て、距離と方向を確認すれば、もう迷うことはありません。

店の外観は想像していたよりも本格的。植木や花とレンガのコントラストがいい感じです。店内の装飾もなかなか凝っていて、床の大理石パターンやステンドグラスがイタリア感を高めています。

到着した時は、ちょうど楽器の搬入中。会場の雰囲気やテーブルの配置を見て、主催者たちと演奏の位置を決めたり、スピーカーのセットなどを着々と進めていきます。

ドアオープンは12時半。それまではたっぷりとリハーサルができますが、レストランという場所柄、響きの感覚をつかむには、いつもよりも時間を要しそう。それに、お客様が入った時、どのように変化するかも、計算しながら慣れておく必要があります。

1時間ほど弾いて、なんとなく感覚がわかってきたところで、ゲスト出演のバリトン歌手、滝沢博さんが到着しました。

前日にリハーサルをしてありますが、お互い一晩寝かせたところで、もう一度お手合わせ。生の歌声とのバランスもどうなるかと気になっていましたが、滝沢さんのリッチな声量に、フルパワーのエレクトーンが負けそうなくらいでした。

定刻通りにドアオープン。次々にお客様が到着し、ダイニングホールはどんどん賑やかになっていきます。

13時になると主催者から挨拶があり、食事スタート。控室にも美味しそうなにおいが漂ってきました。

そして14時には、ほぼ予定通りに演奏が始まりました。最初の曲は歌劇「運命の力」序曲を選んで演奏したのですが、スタートして少々後悔。

というのは、まだデザートが出たばかりで、一部のテーブルでコーヒーのサービスや、下げものが終わっていなかったため、まだスタッフが動かなければならず、一番集中力が必要な曲で、それが気になってしまったから。

気にせず集中できればいいのですが、一瞬でも気をそらしてしまうと、それを払拭するのに苦労します。

そんな私の心配はともかく、お客様の集中力は素晴らしいものでした。せっかく食べ始めたデザートも、途中で手を止めて聞き入ってくれていましたが、なんだか申し訳なかったです。

というわけで、レストランでの演奏会は、もっと気軽に始めるべきだという反省をしました。

7曲のソロを終え、いよいよゲストの滝沢さんが登場し、まずはイタリアの定番曲「帰れソレントへ」から。ダイナミックな歌声に、場内は盛り上がります。

最後は闘牛士の歌をアンサンブルしてプログラム終了。やはり歌は本番にならないと何が起こるのかわかりませんが、滝沢さんはご自身が指揮をすることもあり、決して身勝手な歌い方をせず、常にオーケストラを意識しながら呼吸を合わせてくれましたので、まったく迷うことがありませんでした。

二人揃ってアンコール「オー・ソレ・ミオ」を演奏して終演。ご希望のお客様と個々に写真撮影をしたり、サイン会もありました。

すべての片付けが終わってから、主催者から名古屋名物が振舞われました。ひつまぶしです。

中途半端な時間にオープンしている店はここしか見つからなかったと言って案内されたのは、中区葵にある「名古屋なまずや」。

2階の座敷を取ってくれ、演奏会を振り返りながら、美味しいひつまぶしを頂きました。実は、私にとって名古屋でのひつまぶしは初体験。

東京ではもっぱらうな重ですが、ダシやワサビでさっぱりと味わうウナギもオツですね。今回も名古屋の思い出をたっぷり胸に詰め込んで帰ります。