香川の若者5人が熱演を披露したサマーコンサートは、フレッシュさはもちろんのこと、円熟味さえ漂わせる濃厚な120分でした。演奏会を成功に導いてくれたすべての皆様に感謝しています。
この日のために努力を重ね、指折り数えて当日を待ち望んだのは、出演者だけでなく、陰で支える友人や家族など、多くの人たちです。私も自分のリサイタル同様の思い入れで取り組みました。
当日は午前9時に会場へ。まずたいへんなのは、楽器の運搬です。出演者の自宅にある楽器を、細い階段経由で3階から1階まで下ろすのは、たくましい男性が数人で取り掛かっても容易なことではありません。
現在のエレクトーンは運搬しやすいように分解が可能ですが、その割には重心が取りにくく、実際よりも重たく感じます。
万が一落としでもしたら怪我をする危険もありますから、無事にエレクトーン2台とスピーカーを運んでくれたパパたちにも拍手を送りたいと思います。
また、坂出市民ホールのスタッフたちが、まるで自分たちの主催イベントのように、実によく協力してくれました。その場にいる全員で力を合わせていることが実感できるのは、とても気分がいいものです。
受付はママやお姉さんたちが協力して、着々と準備が整っていきました。
一方、舞台では音響面の調整を試みながらリハーサルを進めますが、アコースティック楽器とエレクトーンとのバランス感に苦労しました。生音とスピーカーからの音では伝わり方が違うので、客席の座り位置によっても聞こえ方に差が出てしまいます。
手っ取り早い解決方法は、アコースティック楽器もマイクを使ってミキサーでバランスを取ることですが、今回、あくまでアコースティック楽器は生音でやりたかったので、エレクトーンをアコースティック楽器に合わつつも、迫力を維持するよう心掛けました。
リハーサルを終えて楽屋で支度中、若者たちの部屋からは笑い声が絶えません。リラックスしているのはとてもいいことです。
やがて迎えた本番。チケットを発行しない無料コンサートですので、お客様がどれだけ来て下さるか、まったく予想がつかなかったのですが、思いのほか大勢の方々にご来場いただきました。
チャイコフスキーのアンサンブル演奏からスタートしたコンサート。華やかなオープニングに、場内が一気に引き込まれていくのが、舞台袖にも伝わってきます。
咳払いひとつ聞こえない客席の空気に、演奏者たちも多くのパワーをもらったことでしょう。演奏に集中するには、最高のシチュエーションです。
第1部はクラシックの大曲揃い。アンサンブル、ソロと多彩な展開で、50分があっという間でした。
第2部は映画音楽やコンテンポラリー作品、そしてテノールによる日本の歌など、バラエティーに富んだ内容。照明にも彩りが加わり、一層盛り上がって行きました。
リハーサルでは数々の失敗があったものの、本番になったら全員が堂々とした立派な演奏に。それぞれの個性が光るプログラムは、十分な聞き応えだったことでしょう。
最後に神田将の演奏を少々・・・なんてふれ込みをしてしまったのですが、これは蛇足だったなと後悔。若者たちの演奏だけでも、まったく不足のない素晴らしい演奏会でした。
みんなのこの笑顔、素敵ですよね。お客様からの惜しみない喝さいは、1年分の稽古よりも価値ある経験になりました。また次回は一層成長した演奏をお届けいたしますので、引き続き応援をお願いいたします。