夜通し稽古を重ね、もう昼前という頃になって小休止。メールをチェックすると、せんくらやカルメンの担当者から事務連絡が届いていました。文字を読むのもやっとですが、孤島のような生活をしていると、世の中からのコンタクトが救いになることもあります。
カルメンの事務連絡の中に、私の心に深く響いた一節がありました。先日のリハーサルで、初めてエレクトーンでのオペラ演奏を聞いたというプロデューサーが、「ひとりであれだけの準備と演奏をするのは、かなりのことだろう」とねぎらっていたとのこと。
演奏家はいつも賞賛を浴びて、褒め言葉に慣れ切っていると思われているかもしれませんが、少なくとも私は違います。気の狂うような努力を重ねていても、それを評価されることはめったにありません。
もちろん、認められることを目的に努力しているわけではありませんし、ステージで苦しいところを見せないのが、粋というものかもしれません。
ただ、どんなに努力をしても思い通りに事が運ばない時、人はひとりが耐えがたくなるのか、誰かに助けを求めたくなる瞬間があります。それでも、演奏は誰かが代われるものではありません。だまって出来るまで稽古するしかないのです。
そんな時、プロデューサーからのねぎらいは本当にうれしく思いました。それも、直接言われたのではなく、間接的に聞いたところに、むしろ真実味を感じます。
リハーサルの時、プロデューサーはどちらかというと気に入らないという表情で私を見ていたように思えました。それでへこんでもいられないと自分を鼓舞して弾き続けたのですが、見ている人はちゃんと見てくれているのですね。